この記事で分かること
- TDnetが取引所の規則に基づく適時開示情報を伝達するシステムであること
- 決定事実・発生事実・決算情報・業績予想の修正等という公式の開示区分
- 無料の閲覧サービスが31日分に限られるという掲載期間の制約
- サイト利用条件に示された生成AI利用・商用収集・自動取得の制限
30秒で分かる定義
TDnet(ティーディーネット)とは、上場会社が取引所の規則に基づいて行う適時開示の情報を、投資家へ同時かつ公平に伝達するために東京証券取引所(JPX)が運営するシステムです。正式には適時開示情報伝達システムと呼ばれ、Timely Disclosure networkの略称です。決算短信や業績予想の修正、合併・公開買付けの決定といった会社情報が、ここに掲載されることで公表されたものとして扱われます。金融庁が運営する法定開示のシステムであるEDINETとは、根拠・書類体系・掲載期間のいずれもが異なります。
なぜ実務で重要なのか
TDnetは実務上、次の3点で決定的な意味を持ちます。
- インサイダー取引規制上の「公表」の起点:JPXは、会社情報が本サービスに掲載された時点で公表措置が完了する旨を説明しています。公開買付け等の事実(金融商品取引法27条の22の2第1項)も同様に整理されています(インサイダー取引規制と大量保有報告制度)
- 決算情報の最速の一次情報:決算短信は有価証券報告書より早く出ます。決算発表当日の分析は事実上TDnet起点です(決算説明会の分析)
- 案件の初報が出る場所:合併・事業譲渡・意見表明などの決定事実はここに出ます(公開買付関連書類の読み解き)
仕組み(開 示区分とEDINETとの違い)
JPXの「適時開示が求められる会社情報」では、上場会社・子会社等の別に加え、次の大分類で開示区分が整理されています(2026年8月3日確認)。
- 決定事実:新株発行、自己株式の取得、合併等の組織再編、公開買付け及びこれに関する意見表明、事業の譲渡、代表取締役の異動 など
- 発生事実:主要株主の異動、上場廃止の原因となる事実、訴訟の提起、親会社の異動、手形の不渡り など
- 決算情報:決算短信、第2四半期決算短信、第1・第3四半期決算短信
- 業績予想・配当予想の修正等:業績予想の修正、予想値と決算値の差異、配当予想の修正(業績予想の開示)
- その他の情報
同ページには2026年12月1日・12月11日に施行予定の新規追加項目も明記されています。開示区分は改定されるため、実務では必ず最新のページで確認してください。EDINETとの役割の違いは次のとおりです。
| 項目 | EDINET | TDnet |
|---|---|---|
| 運営 | 金融庁 | 東京証券取引所(JPX) |
| 根拠 | 金融商品取引法に基づく法定開示 | 取引所の規則に基づく適時開示 |
| 主な情報 | 有価証券報告書、四半期・半期報告書、臨時報告書、大量保有報告書、公開買付関連書類 | 決算短信、決定事実、発生事実、業績予想・配当予想の修正 |
| 無料閲覧の範囲 | 縦覧期間+延長期間(有価証券報告書は計10年) | 閲覧サービスで開示日を含め31日分 |
| プログラムからの取得 | 公式API(要APIキー) | 有料のTDnet APIサービス等 |
整数設例で確認する
設例(架空のモニタリング計画)。上場100社を1年間ウォッチし、1社あたり年12件の適時開示が出るとします。年間の総件数は100社×12件=1,200件です。
ここで効くのが掲載期間です。無料の閲覧サービスは開示日を含めて31日分(土日祝を含む)を公開する仕組みとJPXが説明しており、実際2026年8月2日時点で選択できる公開日は2026年7月3日〜8月2日の約31日分のみでした。
仮に確認間隔を35日に空けると、31日を超えた4日分が閲覧できなくなります。取りこぼし率は4÷35≒11.4%、件数では1,200件×0.114≒137件です(検算:1,200×4÷35=4,800÷35=137.1件)。確認間隔を14日にすれば31−14=17日の余裕が残り取りこぼしはゼロ。年間の確認回数は365÷14≒26回、1回30分なら26×0.5=13時間/年です。「無料で見られる=いつでも遡れる」ではないため、モニタリング体制は掲載期間を前提に設計します。
掲載期間と利用条件の制約
掲載期間。無料の閲覧サービスは31日分です。過去10年分は「東証上場会社情報サービス」、過去5年分の全データ検索には有料の「TDnetデータベースサービス」が必要である旨が記載されています。有料サービスにはこのほかサーバ型・API・Snowflake経由のデータ共有があり、月額数万円〜数十万円規模の料金体系が公表されています(2026年8月3日確認。金額は改定され得るため公式ページで確認してください)。
利用条件。JPXのサイト利用条件には次の内容が示されています(2026年8月3日確認)。
- JPXと契約して取得する場合、又はJPXの許可により取得する場合を除き、商用目的によるデータ収集及び二次利用はできないとされています
- 利用者が生成AI等を用いてサイトの情報を学習・解析・生成に利用する場合であっても、JPXが不利益を被る可能性のある一切の行為を禁止する旨が明記されています
- 高頻度・高負荷につながる可能性のある自動取得等は控えるよう求められています
これはjpx.co.jp全体に適用される共通の条件です。無料ビューア(release.tdnet.info)に固有の規約が別にあるかは公開情報からは特定できず、断定はできません。業務で継続的に取得・二次利用する場合は、有料サービスの契約かJPXの許可を前提に設計するのが正しい出発点です。解釈が必要な場面では原文を確認のうえ専門家に確認してください。
実務での使い方
- 単発の確認:無料の閲覧サービスで探し、31日を超える場合は東証上場会社情報サービスへ切り替えます
- 継続モニタリング:確認間隔を掲載期間より十分短くし、開示のタイトル・区分・日付を台帳化します。区分をそのまま分類キーに使うと集計が容易です
- 体系的なデータ活用:有料サービスの契約が前提です。決算短信のXBRLを取得でき、財務数値の時系列化はXBRL経由が実務的です
- AIによる要約・分類:考え方は適時開示のモニタリングにまとめています。出力は原文と突き合わせ、規約上許容される範囲内で運用します
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「TDnetとEDINETは同じ情報が載る」→ 正しくは「別物」。決算短信はTDnet、有報はEDINETです。両方を見ないと全体像は揃いません。
誤解2:「無料で見られるから自由に集めてよい」→ 正しくは「利用条件がある」。商用目的の収集・二次利用の制限、生成AIによる学習・解析利用の禁止規定、自動取得の自粛要請が示されています。
誤解3:「開示が出た=すぐ取引してよい」→ 判断は慎重に。掲載時点で公表措置が完了するという整理はJPXが示していますが、個別の取引の可否は社内規程と法令の適用判断の問題です。
確認ポイント:訂正開示。決算短信や業績予想は訂正が出ることがあります。初報だけで台帳を確定させない運用にします。
日本実務での扱い
適時開示は取引所規則に基づく義務であり、タイミングと文面はIR部門・経営企画・法務が連携して詰める領域です。決定事実は「決定した時点」、発生事実は「発生した時点」で直ちに開示する建て付けのため、M&A案件では契約の締結スケジュールと開示スケジュールがセットで設計されます。TOBの開示規制や段階的な情報開示の考え方と適時開示の要求が同時にかかる点が難しさの中心です。運用会社側では開示を機械的に取り込んでタグ付けする運用が一般的ですが、これは有料のデータ配信契約を前提とします。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:EDINETとTDnetの違いを説明してください。
「EDINETは金融庁が運営する法定開示のシステムで、有価証券報告書や大量保有報告書が提出されます。TDnetは取引所が運営する適時開示のシステムで、決算短信や決定事実・発生事実、業績予想の修正が掲載されます。無料で遡れる期間もEDINETは縦覧期間ベースで年単位、TDnetの無料閲覧サービスは31日分と大きく違います。」
深掘りでは「適時開示の区分」「決算短信と有価証券報告書はどちらが早く、なぜ内容が違うのか」「開示情報をプログラムで集める際の留意点」が問われます。制度の理解とデータ調達コストの理解をセットで語れると強い回答になります。
よくある質問(F AQ)
Q. TDnetの過去データを無料でまとめて取得できますか?
A. 無料の閲覧サービスは31日分の公開とされており、それ以前をまとめて取得する手段はありません。過去10年分は東証上場会社情報サービス、過去5年分の全データ検索は有料サービスが必要と記載されています。
Q. 取得した適時開示の情報を業務レポートに使えますか?
A. サイト利用条件では、契約またはJPXの許可がある場合を除き、商用目的によるデータ収集及び二次利用はできないと示されています。社外提供物への転載は原文を確認のうえ個別に判断してください。
出典・参考(2 026-08-03確認)
- JPX
(東 京証券取引所)「T Dnetの概要」 - JPX
「適 時開示が求められる会社情報」 - JPX
「サ イトのご利用上の注意と免責事項」 - JPX総研
「有 料情報(適 時開示情報 TDnet)」 - 適時開示情報閲覧サービス
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。制度・利用条件の適用判断は原文の確認と専門家への相談が必要です。設例は理解のための架空数値です。