この記事で分かること

  • 新耐震基準・旧耐震基準を分ける「1981年6月1日」の意味
  • 両者で想定する地震の強さと安全性の考え方の違い
  • 整数設例で見る、旧耐震であることが不動産価値に与えるインパクト
  • 融資審査・DDで旧耐震物件をどう扱うか

30秒で分かる定義

新耐震基準・旧耐震基準とは、1981年6月1日の建築基準法施行令改正を境に区分される耐震設計の基準で、この日以降に建築確認を受けた建物が「新耐震」、それ以前が「旧耐震」と呼ばれます。新耐震基準は震度6強〜7程度の大地震でも建物が倒壊・崩壊せず人命を守ることを目標とする一方、旧耐震基準は震度5程度の中規模の地震を主な想定としており、大地震に対する耐性の考え方が根本的に異なります。区分の基準は「建物の完成日」ではなく「建築確認済証の交付日」である点に注意が必要です。

なぜ実務で重要なのか

不動産取得のDD担当・エンジニアリング会社にとって、新耐震・旧耐震の別はエンジニアリングレポートにおける最初の確認事項の一つです。金融機関(ノンリコースローンの与信審査)では、旧耐震物件に対して耐震診断の実施や追加担保・保証を求めることがあり、融資条件そのものに直結します。不動産鑑定士・アセットマネージャーは、旧耐震であることをPML(予想最大損失率)の悪化要因として評価額に反映させます。

仕組み(新耐震と旧耐震の比較)

項目旧耐震基準新耐震基準
適用対象1981年5月31日以前に建築確認を取得1981年6月1日以降に建築確認を取得
主な想定地震震度5程度で建物が倒壊しないこと震度6強〜7程度でも倒壊・崩壊しないこと
DD・融資への影響耐震診断・補強の要否確認が事実上必須相対的に標準的な審査で足りることが多い

整数設例で確認する

設例(架空数値)。年間NOIが同じ400,000,000円のオフィスビルについて、新耐震物件のキャップレートを4.0%、旧耐震(耐震診断未実施・補強なし)物件は地震リスクプレミアムを織り込みキャップレートが1.0ポイント高い5.0%になると仮定して評価額を比較します。

  • 新耐震物件の評価額=400,000,000円÷4.0%=10,000,000,000円(100億円)
  • 旧耐震物件の評価額=400,000,000円÷5.0%=8,000,000,000円(80億円)

検算:10,000,000,000円×4.0%=400,000,000円、8,000,000,000円×5.0%=400,000,000円で、いずれもNOIと一致します。同じ賃料収入を生む建物でも、新耐震か旧耐震かという1点の違いだけで評価額に20億円(2,000,000,000円)もの差が生じ得ることが分かります。実際の格差幅は耐震診断の結果や補強の有無によって変動しますが、旧耐震であることが評価額に無視できない影響を与える点は共通しています。

融資審査への影響

金融機関は旧耐震物件への融資にあたり、耐震診断の実施状況(診断済みか未実施か)と診断結果(新耐震基準相当の耐震性能があるか)を確認します。診断未実施・耐震性能が不足する場合は、LTV(借入比率)の引き下げ、金利の上乗せ、地震保険の付保要求、耐震補強工事の実施を融資条件とすることがあります。ノンリコースローン(責任財産限定特約付き融資)では、担保不動産そのものの毀損リスクが返済原資に直結するため、旧耐震物件は審査上より慎重に扱われる傾向があります(日本の不動産デット市場の全体像は日本の不動産デット市場を参照してください)。

実務での調べ方・確認手順

  • 建築確認済証・検査済証の交付日を確認し、1981年6月1日を基準に新耐震・旧耐震を判定します(完成日・登記日ではなく確認済証の交付日が基準)。
  • 旧耐震物件では、耐震診断報告書の有無・診断結果(Is値等の指標)を確認し、耐震補強工事の実施履歴があればその内容も確認します。
  • DDシートでは、新耐震・旧耐震の区分と耐震診断の有無を1列で管理し、旧耐震かつ診断未実施の物件には評価モデル上でキャップレートに一定のプレミアムを上乗せするルールを設けるのが実務的です。

この用語を実務で「使える」状態にする

旧耐震物件のリスクをキャップレートへの上乗せ幅として定量化し、取得検討モデルに反映できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「旧耐震=即座に危険な建物」→ 正しくは、耐震診断・耐震補強を経て新耐震基準相当の性能を確保している旧耐震物件も少なくありません。築年数だけで判断せず、診断結果と補強履歴を確認する必要があります。

誤解2:「新耐震なら地震リスクはゼロ」→ 正しくは、新耐震基準は大地震でも倒壊・崩壊せず人命を守ることが目標であり、損傷や修繕の必要性まで排除するものではありません。新耐震物件でもPML(予想最大損失率)による損害規模の見積もりは引き続き必要です。

日本実務での扱い

新耐震・旧耐震の区分は、建築基準法施行令の1981年(昭和56年)改正に基づくものであり、実在する法令上の基準日として広く実務に定着しています(2026年8月時点)。旧耐震建築物の耐震診断・耐震改修を促進するための法的枠組みとして耐震改修促進法が整備されており、多数の建物(不特定多数が利用する一定規模以上の建築物等)について耐震診断の実施が努力義務・義務とされる場合があります。不動産のDD実務では、こうした法令の適用対象に該当するかどうかも、耐震診断の要否・タイミングを判断する材料になります。

実務での想定問答

Q:不動産取得のDDで、新耐震・旧耐震の別をどう確認し、評価にどう反映しますか。
「建築確認済証の交付日が1981年6月1日以降かどうかで判定します。旧耐震の場合は耐震診断の実施状況・診断結果を確認し、未実施または性能不足であれば、評価モデル上のキャップレートに一定のリスクプレミアムを上乗せするか、取得後の耐震補強コストを価格調整に織り込みます。金融機関の融資条件(LTV・金利)にも影響するため、資金調達計画にも反映させます。」(30秒回答例)

よくある質問(FAQ)

Q. 新耐震基準か旧耐震基準かは、建物の完成年でも判断できますか?
A. おおよその目安にはなりますが、正確には建築確認済証の交付日で判定します。建築確認から完成まで一定の期間がかかるため、1981年前後に建てられた建物では完成年だけで判断すると誤ることがあります。

Q. 旧耐震物件は必ず耐震補強をしないと売買・融資ができませんか?
A. 法令上一律に補強が義務付けられているわけではありません。ただし、金融機関の融資条件や買主の投資基準によっては、耐震診断の実施や補強が事実上の前提条件となることがあります。

出典・参考(2026-08確認)

  • e-Gov法令検索(建築基準法、建築基準法施行令、建築物の耐震改修の促進に関する法律)(https://elaws.e-gov.go.jp/)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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