この記事で分かること

  • ロイヤルティ免除法の定義と、PPAでの商標権評価への使い方
  • 想定ロイヤルティ率をどう決めるか
  • 整数設例による免除ロイヤルティの現在価値化
  • MEEMとの使い分け

30秒で分かる定義

ロイヤルティ免除法(Relief from Royalty Method、読み方:ろいやるてぃめんじょほう)とは、対象の商標・ブランドを自社で保有せず外部からライセンスを受けると仮定した場合に支払うはずだったロイヤルティ相当額を、自社保有によって「免除される」経済的便益とみなし、その額を将来にわたって現在価値化することで商標・ブランド価値を評価する無形資産評価手法です。M&Aで取得した商標権をPPA(取得原価配分)で識別・評価する際に標準的に使われます。

なぜ実務で重要なのか

FAS・監査法人のPPA業務では、のれんの一部を商標・ブランドという識別可能な無形資産として区分する際にロイヤルティ免除法を使います(のれんとPPA入門参照)。ライセンスビジネス・消費財業界のM&Aでは、ブランド価値が企業価値の大きな部分を占めることが多く、この評価額がのれんの内訳説明や、買収後の減損リスク管理の基礎データになります。

計算式

各期の免除ロイヤルティ額(税引前)= 商標を使用する事業の売上高 × 想定ロイヤルティ率

想定ロイヤルティ率は、同業種の実際のライセンス契約事例(比較可能な第三者間のロイヤルティ料率)や、業界標準として公表されている料率レンジを参考に設定します。算出した免除ロイヤルティ額に実効税率を反映して税引後にし、無形資産固有のリスクを反映した割引率で現在価値化して合計すると、商標・ブランドの評価額になります。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。商標を使用する事業の初年度売上高を2,000百万円、想定ロイヤルティ率を業界の実勢料率から3%と設定します。

免除ロイヤルティ額(税引前)= 2,000百万円 × 3% = 60百万円。実効税率30%とすると、税引後の免除ロイヤルティ額 = 60百万円 ×(1-30%)= 42百万円です。無形資産固有のリスクを反映した割引率を12%とすると、初年度分の現在価値 = 42百万円 ÷ 1.12 = 約37.5百万円となります。実際の評価では、売上予測に基づく複数年分の免除ロイヤルティ額を同様に現在価値化し、その合計(必要に応じてターミナルバリューを加算)が商標・ブランドの評価額になります。

案件プロセス上の位置付け

ロイヤルティ免除法は、商標のように「その資産単体でロイヤルティ収入という形の対価が市場に存在する」無形資産に適した評価手法です。一方、顧客関連資産のように単独では収益を生まない無形資産にはMEEM(超過収益法)が使われ、資産の性質によって手法を使い分けるのがPPA実務の基本です。同一の企業結合の中で複数の無形資産を評価する場合、それぞれに異なる手法を適用しつつ、評価額の合計とのれんの整合性を確認します。

財務モデル・Excelでの使い方

ロイヤルティ免除法のモデルでは、商標を使用する事業の売上予測シートと、ロイヤルティ率の前提根拠(比較可能なライセンス契約の料率一覧)を別シートで管理します。

  • 想定ロイヤルティ率は業界・商標の強さ(認知度・市場シェア)に応じてレンジを持たせ、単一の点推定ではなく感応度分析で示す
  • 免除ロイヤルティ額の現在価値化はDCF法と同じNPV()関数を使い、割引率は無形資産固有のリスクプレミアムを上乗せした水準を設定する
  • ブランドの耐用年数を有限とみなすか無期限(テミナルバリューを設定)とみなすかは、契約更新の実態や陳腐化リスクを踏まえて判断する

この用語をExcelで「組める」状態にする

想定ロイヤルティ率から免除ロイヤルティ額を算定し、商標・ブランド価値のPPA評価モデルを組めるようになる。

バリュエーション教材でPPA評価の考え方を見る →

実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「ロイヤルティ率は業界平均をそのまま使えばよい」→ 正しくは、対象商標の強さ(市場シェア・ブランド認知度・価格プレミアムの実現度)に応じて調整する必要があります。業界平均をそのまま当てはめると、強いブランドを過小評価、弱いブランドを過大評価するリスクがあります。

誤解2:「商標評価には常にロイヤルティ免除法を使う」→ 正しくは、比較可能なライセンス取引データが乏しい場合はMEEMや他の手法を併用して評価の頑健性を確認します。

日本実務での扱い

(2026年7月時点)日本基準・IFRSともに、企業結合で識別可能な商標権をPPAで個別に評価・計上することを求めており、ロイヤルティ免除法は国際的に確立した評価技法として日本の実務でも広く使われています。日本国内のライセンス取引事例は米国と比べて公開データが限られるため、想定ロイヤルティ率の設定において海外のデータベースや取引事例を参考にする実務が一般的です。米国では独立行政機関(IRS等)や業界団体が公表するロイヤルティ率のベンチマークデータが比較的充実しており、前提の裏付けが取りやすい環境にあります。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:商標権の評価にロイヤルティ免除法を使う理由を説明してください。
「商標は、外部からライセンスを受ければロイヤルティを支払う必要がある資産です。自社で保有していることで、そのロイヤルティ支払いを免除されているとみなし、免除される経済的便益を現在価値化することで、市場で観測可能なライセンス取引データを基礎にした客観性の高い評価ができます。」

深掘りでは「ロイヤルティ率の設定根拠」「ブランドの耐用年数の考え方」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. ロイヤルティ免除法とMEEMのどちらを優先すべきですか?
A. 資産の性質で決まります。単独でライセンス収入という形の対価が観測できる商標にはロイヤルティ免除法、他の資産と組み合わさって初めて収益を生む顧客関連資産にはMEEMが適しています。

Q. 想定ロイヤルティ率は誰が決めますか?
A. 評価実務では、比較可能な第三者間のライセンス契約事例や業界データベースを参照し、対象商標の強さを踏まえて評価担当者が設定します。

出典・参考(2026-07-25確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。