この記事で分かること

  • 登記事項証明書(表題部・権利部)の構成と、不動産DDでの位置づけ
  • 所有権・抵当権等の権利関係、差押えの有無をどう読むか
  • 整数設例による抵当権抹消(債務残高と登記上の極度額の確認)の考え方
  • 権利関係DD・信託受益権売買など関連論点との整理

30秒で分かる定義

登記事項証明書によるDDとは、取得を検討する不動産の登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)を取得し、表題部(不動産の物理的状況)と権利部(甲区:所有権に関する事項、乙区:所有権以外の権利=抵当権・地上権等に関する事項)を確認することで、権利関係の異常(二重譲渡、差押え、未抹消の抵当権等)がないかを検証する、不動産取得DDの最も基本的な手続です。地役権・越境・埋設物といった個別のリスク論点を扱う権利関係DDと並んで、取得判断の前提となる基礎的な確認作業です。

なぜ実務で重要なのか

取得担当・アクイジションは、売主の所有権に瑕疵がないか、想定外の担保権が設定されていないかを最初に確認します。司法書士は決済(クロージング)時の抵当権抹消・所有権移転登記を実行します。レンダーは担保設定順位(先順位抵当権の有無)を確認し、弁護士は差押え・仮処分等の権利制限の有無を確認して契約に反映させます。

仕組み(登記事項証明書の構成)

区分記載内容DDでの確認ポイント
表題部所在・地番・地目・地積、建物の構造・床面積等登記上の面積と実測・現況に齟齬がないか
権利部 甲区所有権の保存・移転の履歴、差押え・仮処分等現在の所有者が真の所有者と一致するか
権利部 乙区抵当権・根抵当権・地上権・地役権等被担保債権額(極度額)、抹消が完了するタイミング

整数設例で確認する

設例(架空数値、単位:百万円)。売主が保有するオフィスビルの登記事項証明書(乙区)に極度額1,200の根抵当権が設定されており、売買代金は1,000、決済時点の実際の借入残高(被担保債権の残高)は700であるとの説明を受けたケースです。

  • 決済時に売買代金1,000のうち700を借入返済(抵当権抹消)に充当
  • 売主の受領額=1,000-700=300

検算:700(抹消費用)+300(売主受領額)=1,000で売買代金と一致します。決済当日、司法書士が金融機関から返済額を確認した上で、抵当権抹消登記と所有権移転登記を同時に(または直後に)申請することで、買主は抵当権の負担のない状態で所有権を取得できます。極度額1,200はあくまで担保の上限枠であり、実際の残債務700とは別物である点を混同しないことが重要です。

案件プロセス上の位置付け

登記事項証明書の確認は、LOI締結前後の初期スクリーニング段階と、決済直前の最終確認(決済日当日の登記事項証明書再取得を含む)の少なくとも2回行うのが実務標準です。特に決済直前の再確認は、契約締結からクロージングまでの間に新たな差押え・担保設定がなされていないかを確認するために不可欠です。信託受益権売買の場合、不動産そのものの登記名義は受託者(信託銀行等)のままであるため、確認対象は信託目録・受益者情報に置き換わります。

実務での調べ方・確認手順

  • 決済資金の内訳(売買代金・抵当権抹消費用・仲介手数料・登録免許税等)を1枚の資金移動表(セツルメントステートメント)にまとめ、抵当権抹消に必要な金額を売買代金からの充当で賄えるかを検算します。
  • 登記事項証明書は法務局(登記所)の窓口またはオンライン(登記情報提供サービス)で取得でき、DDのタイムラインには初期取得日・決済直前の再取得日を明記して管理します。レントロールや賃貸借契約の確認作業にAIを活用する動きも広がっています。
  • 極度額と実際の残債務残高は別の数値として管理し、混同しないようセルを分けます。

この用語を実務で「使える」状態にする

決済時の資金移動表(セツルメントステートメント)を組み、抵当権抹消と所有権移転が資金的に整合することを検算できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「根抵当権の極度額=実際の借入残高」→ 正しくは、極度額は担保できる上限枠であり、実際の残債務(被担保債権額)は別途金融機関への確認が必要です。

誤解2:「登記事項証明書を1回取得すれば十分」→ 正しくは、LOI前後の初期確認に加え、決済直前にも再取得し、契約締結後に新たな権利変動がないかを確認するのが実務標準です。

確認ポイントとして、決済日に抵当権抹消登記と所有権移転登記の申請順序・同時性が確保されているかが挙げられます。

日本実務での扱い

日本では不動産登記法に基づき、法務局が管理する登記記録から登記事項証明書が発行され、誰でも交付を請求できます(2026年8月時点)。オンラインの登記情報提供サービスを通じて、法務局の窓口に赴かずに登記情報を確認することも可能です。決済(クロージング)実務では、買主側の司法書士が売買代金の一部を用いて売主の抵当権抹消を確認したうえで所有権移転登記を申請する一連の手続を担うのが一般的です。信託受益権の売買では不動産の登記名義自体は受託者のままであるため、権利関係DDは信託目録・信託契約書の確認が中心となる点に留意が必要です。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:決済(クロージング)当日、司法書士はどのような役割を果たしますか。
「売買代金の一部で売主の既存借入(抵当権の被担保債権)が完済されることを金融機関に確認し、抵当権抹消登記と買主への所有権移転登記の申請を、権利関係に空白が生じないタイミングで実行します。この一連の手続を決済と呼び、買主は抵当権の負担のない状態で所有権を取得できます。」(30秒回答例)

よくある質問(FAQ)

Q. 登記事項証明書はどこで取得できますか?
A. 全国の法務局(登記所)の窓口で交付請求できるほか、登記情報提供サービスを利用すればオンラインで登記情報を確認・取得することも可能です。

Q. 根抵当権と抵当権の違いは何ですか?
A. 抵当権は特定の債権を担保するのに対し、根抵当権は極度額の範囲内で将来発生する不特定の債権を継続的に担保する仕組みです。不動産取得DDでは、いずれの場合も決済時に抹消されることを確認する点は共通ですが、根抵当権では極度額と実際の残債務残高が一致しないことを踏まえた確認が必要です。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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