この記事で分かること

  • 「非事業用資産は時価評価する」の具体的な中身(資産種類ごとの評価技法)
  • 遊休不動産・投資有価証券・保険積立金それぞれの評価アプローチ
  • 整数設例による非事業用資産の積み上げ計算
  • 案件プロセスで評価根拠をどう確認・検証するか

30秒で分かる定義

非事業用資産の個別評価(Itemized Valuation of Non-Operating Assets、読み方:ひじぎょうようしさんのこべつひょうか)とは、DCF法やマルチプル法による事業価値評価の対象から除外した、遊休不動産・投資有価証券・保険積立金等の非事業用資産を、それぞれの資産特性に応じた方法で個別に時価評価し、企業価値・株式価値に反映する実務です。「非事業用資産は時価評価する」という原則は広く知られていますが、実際には資産の種類ごとに評価技法が異なります。

なぜ実務で重要なのか

M&A・FASでは、対象会社が本業に使っていない資産を多く保有している場合、EVブリッジでそれらを個別に評価しないと株式価値を過小評価してしまいます。PEでは、投資後に非事業用資産を売却してキャッシュを捻出する「アセットライト化」戦略の実行可能性を評価段階で見極める材料になります。相続税・事業承継の税務評価でも、非上場株式の評価において非事業用資産(特定の評価会社の判定に関わる)を個別に把握する必要があります。

計算式(仕組み)

非事業用資産の評価に単一の公式はなく、資産種類ごとに適切な評価アプローチを選択します。

株式価値=事業価値(DCF等)+非事業用資産の時価評価額の合計-ネットデット

代表的な資産と評価アプローチは次のとおりです。遊休不動産は不動産鑑定評価または近隣の取引事例比較法・収益還元法、投資有価証券(上場株式)は直近市場価格、非上場株式は簡易的な純資産法やマルチプル法、保険積立金(生命保険等の資産計上額)は解約返戻金相当額、貸付金・預け金は回収可能性を考慮した帳簿価額、が基本的な考え方です。

整数設例で確認する

設例(架空数値・単位:百万円)。DCF法で算定した事業価値が8,000、ネットデットが1,500の会社が、次の非事業用資産を保有しているとします。

資産評価方法評価額
遊休地(未利用の旧工場跡地)不動産鑑定評価額800
上場株式(政策保有以外)直近市場価格300
保険積立金解約返戻金相当額150
非事業用資産 合計1,250

株式価値=事業価値8,000+非事業用資産1,250-ネットデット1,500=7,750百万円。非事業用資産を評価に含めなかった場合の株式価値は8,000-1,500=6,500百万円にとどまるため、1,250百万円(19%)の過小評価になっていたことが分かります。

案件プロセス上の位置付け

DDの段階では、固定資産台帳・投資有価証券明細・保険契約一覧をもとに、事業用と非事業用の切り分けを1件ずつ行います。「遊休」と判定する基準(一定期間稼働実績がない、事業計画に使用予定がない等)を明確にしておかないと、評価者によって対象資産の範囲がぶれてしまいます。売却制限(担保設定・処分制限特約の有無)がある資産は、時価評価額をそのまま加算してよいか、流動性の観点から調整を検討します。

財務モデル・Excelでの使い方

非事業用資産の評価シートでは、資産を1行ずつリストし、評価方法・評価額・評価根拠(鑑定書番号、直近株価、保険会社からの解約返戻金証明書等)を並べて管理します。

  • 資産種類ごとに評価方法をプルダウンで選択できるようにし、評価額の入力欄と紐づける
  • 合計を=SUM(評価額範囲)で自動集計し、EVブリッジのシートに1行として連携させる
  • 評価額に不動産鑑定評価等の外部専門家の見積りが必要な資産は「未確定」フラグを立て、DD完了までの暫定値と最終値を区別できるようにする

非事業用資産の中でも取引先との関係で保有する政策保有株式は評価の考え方がやや特殊で、政策保有株式のEVブリッジ調整で詳しく扱っています。

この用語をExcelで「組める」状態にする

遊休不動産・投資有価証券・保険積立金を1件ずつ整理し、株式価値に正しく反映するワークシートを設計できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「非事業用資産は簿価のまま足せばよい」→ 正しくは、資産種類ごとの時価評価が必要です。取得から年数の経った不動産や有価証券は、簿価と時価の乖離が大きいことが珍しくありません。

誤解2:「非事業用資産は全部同じ方法で評価できる」→ 正しくは、不動産・有価証券・保険等、資産の性質ごとに適切な評価技法を選ぶ必要があります。一律にDCF法を当てはめるのは誤りです。

実務家はさらに、①評価額の算定根拠となる資料(鑑定評価書、有価証券の時価証明、保険会社の解約返戻金証明書)の入手可否、②売却に伴う税効果(含み益への法人税等相当額)を考慮するかどうか、を確認します。

日本実務での扱い(2026年8月時点)

相続税・事業承継の税務評価(取引相場のない株式の評価)においても、会社が保有する土地・上場有価証券等が一定割合を超えると「株式等保有特定会社」や「土地保有特定会社」として、通常の類似業種比準方式ではなく純資産価額方式に近い評価が求められる仕組みがあり、非事業用資産の個別把握はM&A評価だけでなく税務評価でも重要な作業です。有価証券報告書や決算短信の附属明細表(有形固定資産等明細表、投資有価証券明細表)は、非事業用資産の候補を洗い出す出発点として実務でよく参照されます。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:「非事業用資産は時価評価する」と言われますが、実際にはどう評価しますか?
「資産の種類ごとに評価アプローチを変えます。遊休不動産は不動産鑑定評価や取引事例比較法、上場株式は直近市場価格、保険積立金は解約返戻金相当額を用いるのが基本です。単一の方法で一律評価するのではなく、資産ごとの根拠資料を確認しながら積み上げていきます。」

深掘りでは「遊休資産か事業用資産かの線引きをどう判断するか」「売却時の税効果を評価額に織り込むべきか」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 非事業用資産と余剰現金はどう違いますか?
A. 余剰現金は事業運営に必要な運転資金を超える現預金を指し、通常はネットデットの計算上そのまま控除項目(現金加算)として扱われます。非事業用資産は不動産や有価証券など現金以外の資産を指し、個別評価が必要な点で扱いが異なります。

Q. 遊休不動産の評価に不動産鑑定士への依頼は必須ですか?
A. 法律上必須というわけではありませんが、金額的重要性が高い場合や、後日の紛争リスクを避けたい場合は、客観性の高い不動産鑑定評価書を取得するのが実務上の標準的な対応です。重要性が低い資産は路線価や固定資産税評価額を参考にした簡便評価で済ませることもあります。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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