この記事で分かること
- 預貸率(LDR)の定義と、銀行の資金運用効率を示す意味
- 計算式と整数設例での検算
- 預貸率が低い(高い)ことが意味するリスクの違い
- 日本の低預貸率の背景と有価証券運用への影響
30秒で分かる定義
預貸率(LDR、Loan-to-Deposit Ratio、読み方:よたいりつ)とは、銀行が集めた預金のうち、どれだけの割合を貸出金として運用しているかを示す指標です。「貸出金÷預金」で計算され、銀行の本業(お金を集めて貸す)における資金運用の活発さを表します。預貸率が高いほど積極的に貸出へ資金を振り向けていることを、低いほど預金の多くが貸出以外(有価証券運用や日銀当座預金)に向かっていることを意味します。
なぜ実務で重要なのか
銀行アナリストにとっては、預貸率の水準と推移が、その銀行の収益構造(貸出中心か、有価証券運用中心か)や、地域経済における資金需要の強さを読み解く手がかりになります。銀行モデリングでは、預貸率の仮定を通じて貸出金の予測を組み立てます。PE・M&Aの実務家が地銀の買収・提携を検討する際、預貸率の低さは「有価証券運用への依存度が高く、金利変動リスクを抱えている可能性」のシグナルとして注目されます。
計算式
分子・分母とも期末残高を用いるのが一般的ですが、期中平均を用いる開示もあります。預貸率が100%を超える場合、預金だけでは貸出を賄いきれず、市場調達(コールマネー・借入金等)に依存していることを意味します。逆に預貸率が著しく低い場合、集めた預金の多くが貸出以外の運用(有価証券・日銀当座預金)に回っていることになります。
整数設例で確認する
設例(架空数値・単位:億円)。ある地方銀行の期末残高が次のとおりだったとします。
- 貸出金残高:30,000
- 預金残高:60,000
預貸率 = 30,000 ÷ 60,000 × 100 = 50%です。残りの預金30,000(60,000-30,000)は、貸出以外の運用(国債等の有価証券、日銀当座預金)に振り向けられていると推測できます。仮に地域の資金需要が乏しく、貸出金が20,000にとどまる一方、預金は変わらず60,000だった場合、預貸率は20,000÷60,000×100=33.3%まで低下します。預貸率の低下は、集めた資金の運用先が貸出から有価証券・市場運用へシフトしていることを示唆し、金利変動時の有価証券含み損リスクが相対的に高まっている可能性を示します。
融資審査への影響
預貸率自体は融資審査の直接的な基準ではありませんが、銀行全体の資金運用の余力を反映します。預貸率が低い銀行は、貸出拡大の原資(預金)に余力があるため、新規の貸出案件に前向きな姿勢を取りやすい傾向があります。逆に預貸率が100%に近い銀行は、追加の貸出には市場調達コストの上昇を伴うため、より慎重な審査姿勢になることがあります。
財務モデル・Excelでの使い方
銀行モデルでは、預金の増加予測に対して仮定の預貸率を掛けることで貸出金残高を予測する、シンプルなドライバーとして使われることがあります。
- 預金予測行:地域経済・人口動態を踏まえた成長率を仮定して推計
- 貸出金予測行:
=予測預金残高×想定預貸率で算出 - 残余資金(預金-貸出金):有価証券運用・日銀当座預金への配分先として別行で管理
預貸率の仮定を動かすことで、貸出中心の成長シナリオと有価証券運用中心のシナリオを比較する感応度分析ができます。
この用語をExcelで「組める」状態にする
預貸率を貸出金予測のドライバーとして使い、資金運用配分のシナリオ分析ができるようになる。
銀行モデリング入門で実装手順を見る →
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「預貸率は高いほど良い」→ 正しくは、高すぎる預貸率は市場調達への依存や流動性リスクの高まりを意味することがあります。逆に低すぎる預貸率は収益機会の逸失や金利リスクの偏りを示唆します。適正水準は地域・銀行の戦略によって異なります。
誤解2:「預貸率が低い銀行は経営が弱い」→ 正しくは、地域の資金需要自体が乏しい場合、預貸率の低さは経営努力とは無関係な構造的要因です。地域経済の状況と合わせて評価する必要があります。
日本実務での扱い
(2026年7月時点)日本の銀行、特に地方銀行の預貸率は、人口減少・地域経済の縮小を背景に低下傾向が続いており、全国銀行ベースで60〜70%台の銀行も少なくありません。この結果、多くの地方銀行が預金超過分を国内外の有価証券運用に振り向けており、金利上昇局面での有価証券含み損リスクが金融庁・日本銀行の監督上の重要な着眼点となっています。日本銀行の金融システムレポートでは、地域銀行の預貸率の推移と有価証券運用リスクが継続的に分析対象とされています。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:預貸率が低い銀行にはどのようなリスクがありますか?
「預貸率が低い銀行は、集めた預金の多くを有価証券運用など貸出以外に振り向けています。この場合、貸出のような相対的に安定した利回りではなく、市場金利の変動に直接さらされる有価証券価格変動リスク(金利上昇局面での含み損)を抱えやすくなります。また、貸出という本業での収益機会を十分に活かせていない可能性もあり、収益力の観点からも注視すべき指標です。」
深掘りでは「日本の地方銀行で預貸率が低い構造的な理由」が問われることがあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 預貸率100%超はどのような状態ですか?
A. 預金だけでは貸出を賄いきれず、コールマネーや金融機関からの借入等、市場調達に依存している状態です。急成長中の銀行や、預金基盤が相対的に薄い銀行で見られることがあります。
Q. 預貸率とNIMにはどのような関係がありますか?
A. 直接の計算式上の関係はありませんが、預貸率が高く貸出中心の運用を行う銀行は、一般にNIM(純金利マージン)が有価証券運用中心の銀行より高くなる傾向があります。ただし信用リスクとのトレードオフも伴います。
出典・参考(2026-07-25確認)
- 日本銀行「金融システムレポート」(地域銀行の預貸率・有価証券運用に関する分析) https://www.boj.or.jp/
- 全国銀行協会「全国銀行決算発表」関連資料 https://www.zenginkyo.or.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。