この記事で分かること

  • 「通算税効果額」とは何を指し、なぜ会社間で精算するのか
  • 損益通算による欠損金の配分と税額減少分の割り振りを追う整数設例
  • 精算規程で決めるべき論点(税率・対象範囲・授受の時期・修更正時)
  • 単体決算での会計・税務上の取扱い(2026年8月時点)

30秒で分かる定義

グループ通算制度における税負担額の精算実務(Tax Sharing Payment Settlement under the Group Tax Relief System、読み方:ぐるーぷつうさんせいどのぜいふたんがくのせいさん)とは、損益通算によってグループ各社の税負担に生じた有利・不利を「通算税効果額」として算定し、会社間で金銭精算する社内実務です。グループ通算制度は、連結納税制度に代わる制度として2022年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています(2026年8月時点)。申告・納付は各社が個別に行う一方、欠損法人の欠損金を所得法人の所得と通算できるため、欠損を提供した会社と、税負担が軽くなった会社の間で経済的な移転が発生します。

なぜ実務で重要なのか

親会社の財務・税務部門は、算定式と授受スケジュールを定めた「税負担額の精算に関する規程」を整備し、毎期の計算と実行を担います。子会社の経理・経営企画にとっては単体損益に直接効く入出金であり、業績評価にどう反映するかの判断が要ります。監査法人は規程の存在と一貫適用を確認します。少数株主のいる孫会社や共同出資先が絡む場合、精算の合理性は寄附金認定などの論点にも接続します。

仕組み:欠損の提供と税額減少分の配分

考え方は単純です。欠損法人が提供した欠損金によって所得法人の税額が減る。その減少額が便益であり、欠損法人へ還元します。

通算税効果額 = 損益通算により配分された欠損金額 × 適用税率
(所得法人が支払い、欠損法人が受け取る)

損益通算では、欠損法人の欠損金額が所得法人の所得金額の比で各社へ配分されます。配分額は「欠損金額 × その所得法人の所得 ÷ 所得法人の所得合計」で求められます。規程で決めるべき論点は、①適用税率(法人税の基本税率のみか地方法人税を含めるか)、②対象範囲(損益通算のみか、繰越欠損金や税額控除の通算効果も含めるか)、③授受の時期(確定申告後の一括か中間時の仮精算も行うか)、④修更正時に遡って再精算するか翌期調整とするか、の4点です。

整数設例で確認する

設例(架空数値・単位:百万円)。P社・A社・B社の3社、適用税率は法人税の基本税率23.2%とし、地方税等は捨象します。

会社通算前所得欠損の配分通算後所得税額
P社1,000△250750174.0
A社600△150450104.4
B社△400+40000
合計1,20001,200278.4

配分の検算。所得法人の所得合計は1,000+600=1,600。B社の欠損400は、P社へ400×1,000÷1,600=250、A社へ400×600÷1,600=150と配分され、合計400で一致します。

税額の検算。P社750×23.2%=174.0、A社450×23.2%=104.4で合計278.4。グループ全体1,200×23.2%=278.4と一致します。通算がなければP社232.0とA社139.2の計371.2ですから、税額の減少は371.2-278.4=92.8です。

精算額の検算。この92.8はB社が欠損400を提供して生まれた便益です。提供先ごとに割ると、P社は250×23.2%=58.0、A社は150×23.2%=34.8だけ税額が減っており、58.0+34.8=92.8と一致します。したがってP社からB社へ58.0、A社からB社へ34.8を支払うのが標準的な精算です。

PL・BS・CFへの影響

単体決算では、精算金の授受は税金費用の調整として処理されます。B社は92.8を受け取って税引後利益が改善し、P社・A社は申告納税額に加えて精算金を負担するため単体の実効税率が高く見えます。連結ではグループ内取引として相殺されるため税金費用に影響はありません。企業会計基準委員会の実務対応報告に、グループ通算制度を適用する場合の会計処理と開示の取扱いが示されています(2026年8月時点。適用時は最新版を確認してください)。予算上は実効税率のプランニングに直結するため、年度予算のプロセスで精算見込額まで織り込むと着地見込みがぶれません。

実務での調べ方・確認手順

  • 1行1社の管理表に、通算前所得・欠損配分額・通算後所得・税額・精算額を並べ、欠損配分の合計がゼロになることを検算行で確認する
  • 配分計算は =欠損合計*自社所得/所得法人合計 とし、分母は =SUMIF(所得列,">0",所得列) で所得法人だけを拾う
  • 精算額 =配分された欠損額*税率 の支払側合計と受取側合計が一致することをチェック行で示す
  • 制度は国税庁の解説資料、会計処理は企業会計基準委員会の公表物、開示例はEDINETの税効果会計関係注記で確認する

連結予算管理・グループ経営管理の年間カレンダーに精算スケジュールを組み込むと運用が安定します。

この用語を実務で「使える」状態にする

通算税効果額の配分計算と精算スケジュールを、グループ予算と資金計画に組み込めるようにします。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「通算制度では親会社がまとめて申告・納付する」→ 正しくは、各法人がそれぞれ申告・納付します。旧連結納税制度との大きな違いであり、だからこそ会社間の経済的移転を別途精算する必要が生じます。

誤解2:「精算しなくても連結では同じ」→ 正しくは、単体の損益と各社の資金繰りが歪みます。欠損会社は他社の税額を減らしているのに何も受け取らない状態になり、少数株主や共同出資者がいる場合は利害調整上の問題になります。

誤解3:「精算金は課税所得を増減させる」→ 正しくは、通算税効果額として授受される金額は法人税法上、益金・損金に算入しない取扱いとされています(2026年8月時点)。ただし規程から外れた金額を授受すればその部分の性格が問われます。算定式どおりに計算し記録を残すことが防御になります。

日本実務での扱い

(2026年8月時点)対象は内国法人である親法人と、その完全支配関係にある内国法人で、適用には承認が必要です。制度の詳細、損益通算の計算方法、加入・離脱時の取扱いは国税庁の解説資料に整理されています。条文や政省令は改正されることがあるため、実際の計算では適用事業年度の最新資料と顧問税理士の確認を前提にしてください。会計面の実務上の検討事項は、①通算税効果額の表示区分、②繰延税金資産の回収可能性をグループ単位でどう判断するか、③注記での説明、が中心です。日本独自の制度であるため、海外子会社を含む税務ガバナンスとは別立てで管理するのが一般的です。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:所得1,000のP社、所得600のA社、欠損400のB社からなる通算グループで、B社が受け取るべき精算金はいくらですか。税率は23.2%とします。
「欠損400は所得比で配分され、P社へ400×1,000÷1,600=250、A社へ400×600÷1,600=150です。減少する税額はP社が250×23.2%=58.0、A社が150×23.2%=34.8で、B社は合計92.8を受け取ります。グループ全体では通算前371.2が通算後278.4に減っており、その差92.8と一致します。」

深掘りでは「精算金を子会社の業績評価に含めるべきか」「欠損会社が離脱するときの未精算額の扱い」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 精算は法律で義務づけられていますか。
A. 必ず金銭を授受しなければならないという趣旨の義務ではなく、規程を定めて授受するのが一般的です。精算しない場合、欠損を提供した会社に便益が残らないため、少数株主や共同出資者の利害の観点で説明が必要になります。設計は税務・会計の専門家に確認してください(2026年8月時点)。

Q. 事業部門の業績評価に精算金を含めるべきですか。
A. 目的次第です。事業の稼ぐ力を測るなら税引前利益で評価して影響を除き、単体の配当能力や資金繰りを見る指標には含めます。指標ごとに扱いを決めて規程に書いておくと期中の議論が減ります。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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