この記事で分かること

  • 土地収用(公共収用制度)の定義と、土地収用法における手続きの位置付け
  • 事業認定から補償金支払いに至る手続きの流れ
  • 正当な補償額の整数設例
  • 担保不動産が収用対象となった場合のレンダーへの影響

30秒で分かる定義

土地収用(Eminent Domain、読み方:とちしゅうよう)とは、道路・鉄道・河川改修等の公共の利益となる事業のため、土地収用法に基づき国・地方公共団体・事業者が、正当な補償のもとで私有地の所有権その他の権利を強制的に取得する制度です。日本国憲法は財産権を保障する一方、正当な補償のもとであれば私有財産を公共のために用いることができる旨を定めており、土地収用法はその具体的な手続きを定める法律です。実務では単に「収用」と呼ばれます。

なぜ実務で重要なのか

不動産デベロッパー・再開発事業者にとっては、事業用地の取得段階で、任意買収がまとまらない場合の最終手段として収用制度が位置付けられます。金融機関の担保評価・融資審査では、担保不動産が都市計画道路の予定地に含まれる等、将来収用の対象となり得るかを確認する必要があります。投資家・アセットマネージャーにとっては、取得検討中の不動産が収用リスクを抱えていないかを法務・権利関係DDで確認するポイントのひとつです(権利関係DD)。

計算式(または仕組み)

収用手続きは、大きく次の段階を経て進みます。

段階内容
①事業認定事業の公益性を国土交通大臣または都道府県知事が認定
②収用裁決の申請任意交渉が不調の場合、事業者が収用委員会に裁決を申請
③収用委員会の審理都道府県に設置される収用委員会が、権利者の意見を聴取して審理
④権利取得・明渡裁決補償額を含む裁決が下され、所有権移転と明渡しの時期が確定
⑤補償金の支払い裁決に基づき補償金が支払われ、所有権が事業者に移転
表:土地収用の手続きの流れ(典型例)
正当な補償額 = 相当な価格(土地・建物の評価額)+ 通常生ずる損失の補償(移転費用・営業補償等)

整数設例で確認する

設例(架空数値・単位:千円)。事業用地として収用対象となった土地・建物のケースです。

  • 土地・建物の相当な価格(鑑定評価による):500,000
  • 移転雑費等、通常生ずる損失の補償:20,000
  • 営業補償(休業損失等):10,000

合計補償額=500,000+20,000+10,000=530,000千円。検算:内訳を積み上げても530,000千円で一致します。この設例が示すとおり、収用の補償は不動産そのものの価格だけでなく、移転や休業に伴う実費・損失も含めて評価される点が特徴です。

リスク配分への影響

担保不動産が収用対象となった場合、収用によって権利者が受け取る補償金には、抵当権者が優先的に弁済を受けられる仕組み(物上代位)が及びます。融資契約の実務では、担保不動産が収用対象区域に含まれていないかを与信審査の段階で確認し、含まれる場合は補償金による期限前弁済の取り扱いを契約条項に織り込むことがあります。投資家にとっては、収用による補償額が保有不動産の帳簿価額・想定売却価格を下回るリスクがある点が投資判断上の留意点です。

実務での調べ方・確認手順

  • 都市計画決定の有無を確認する:対象地が都市計画道路・都市計画公園等の区域に含まれていないか、自治体の都市計画図で確認します。
  • 事業認定の状況を確認する:具体的な事業計画が進行している場合、事業認定の告示状況を自治体・事業者に確認します。
  • DDチェックリストへの反映:権利関係DDの一項目として、収用予定区域該当性の有無を明示的にチェックし、該当する場合は評価額・投資判断への影響を別途検討します。

この用語をExcelで「組める」状態にする

収用予定区域に該当する不動産を評価対象から除外・調整するロジックを、権利関係DDのチェックリストと合わせて実装する。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「収用は補償なしで行われる」→ 正しくは、日本国憲法上、私有財産を公共のために用いる場合には正当な補償が必要とされています。収用は無償の接収ではなく、土地収用法に基づく評価手続きを経て補償額が決定されます。

誤解2:「事業用地に該当すれば直ちに強制的に土地を奪われる」→ 正しくは、収用は最終手段であり、通常はまず任意買収による交渉が先行します。任意交渉がまとまらない場合に限り、事業者が収用委員会に裁決を申請する手続きに進みます。

日本実務での扱い

土地収用の手続きは土地収用法に定められています(2026年8月時点)。収用委員会は各都道府県に設置され、事業者と権利者の双方の主張を踏まえて補償額等を裁決する準司法的な機関として機能します。税務上は、収用等に伴い資産を譲渡した場合の譲渡所得について、一定の要件のもとで特別控除等の税制上の措置が設けられており、詳細な適用要件は国税庁の公表資料で確認する必要があります。再開発・大規模インフラ整備が進む地域の不動産を検討する際は、収用予定区域該当性の確認が権利関係DDの標準項目のひとつです。

実務での想定問答

Q:再開発予定地周辺の不動産DDで、収用リスクをどのように評価しますか。
「まず都市計画図で対象地が都市計画道路等の区域に含まれていないかを確認します。含まれる場合は、事業認定の進捗状況(計画段階か、認定済みか)を確認し、収用が現実化する時期の見通しを立てます。収用が見込まれる場合は、想定される補償額と保有継続時の想定価値を比較し、投資判断・保有期間の見直しに反映させます。」(30秒回答例)

よくある質問(FAQ)

Q. 収用対象になったら必ず土地を手放さなければなりませんか?
A. 通常はまず事業者との任意買収交渉が行われます。条件面で合意できない場合に、事業者が収用委員会に裁決を申請する手続きに進みますが、この段階でも正当な補償の内容について意見を述べる機会があります。

Q. 補償金を受け取った場合、税制上の優遇はありますか?
A. 収用等に伴う資産の譲渡については、一定の要件を満たす場合に譲渡所得の特別控除等の税制上の措置が設けられています。適用要件は個別性が高いため、国税庁の公表資料や税務専門家への確認が必要です。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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