この​記事で​分かる​こと

  • 評価勘定(Contra Account)の定義と、貸倒引当金・減価償却累計額など代表的な科目
  • 間接控除方式と直接控除方式の違いと、財務諸表等規則での表示ルール
  • 整数設例で、建物の累計額と売掛金の貸倒引当金を仕訳・BS表示まで確認
  • 資産に係る引当金と、負債に計上される引当金の区別

30秒で​分かる​定義

評価勘定(Contra Account、ひょうかかんじょう)とは、特定の資産などの帳簿価額を間接的に減額するために設ける勘定です。貸倒引当金や減価償却累計額が代表例で、取得原価や債権額と、減額された金額を分けて表示できます。評価勘定を差し引いた後の残高が帳簿価額(純額)です。

個別の科目は貸倒引当金、減価償却累計額で扱います。本ページは、それらに共通する間接控除の考え方と、直接控除方式との表示の違いを整理する総論です。

なぜ実務で​重要なのか

経理・決算担当は、仕訳と表示の方法(間接か直接か)を決算書の様式に合わせます。財務分析・FAS・PEは、BSの純額だけでなく、取得原価と累計額の関係から設備の老朽化度や債権の回収リスクを読みます。融資担当者は、売掛金に対する貸倒引当金の比率で債権の質を確認します。

計算式​(または仕組み)

帳簿価額(純額)=資産の取得原価(債権額)−評価勘定の残高

財務諸表等規則は、流動資産に係る引当金を、各資産科目に対する控除科目として科目別に掲記するのを原則とし、一括して控除科目として掲記する方法や、各資産の金額から直接控除して残高を資産の金額として表示する方法(注記が必要)も認めています[1]。有形固定資産の減価償却累計額も、各資産科目の控除科目として掲記するのが原則で、直接控除も認められています[1]。無形固定資産の減価償却累計額・減損損失累計額、繰延資産の償却累計額は、資産の金額から直接控除して残高を表示するとされています[1]。

評価勘定対象表示の考え方(財務諸表等規則)
貸倒引当金売掛金・貸付金などの債権科目別の控除科目が原則。一括控除・直接控除も可(第20条)
減価償却累計額建物・機械などの有形固定資産控除科目として掲記が原則。直接控除も可(第25条・第26条)
減価償却累計額・減損損失累計額無形固定資産直接控除して残高を表示(第30条)
償却累計額繰延資産直接控除して残高を表示(第38条)
(参考)自己株式株主資本(資産の評価勘定ではなく純資産の控除項目)株主資本の控除項目として利益剰余金の次に掲記(第66条)

整数設例で​確認する

設例(架空数値)です。単位は百万円。

  • 建物:取得原価5,000、耐用年数20年・残存価額なしの定額法 → 年間償却費 = 5,000 ÷ 20 = 250。前期末の累計額が1,500なら、当期末の累計額 = 1,500 + 250 = 1,750、帳簿価額 = 5,000 − 1,750 = 3,250
  • 当期の仕訳(間接控除):(借)減価償却費250/(貸)減価償却累計額250。直接控除なら(貸)建物250となり、建物は取得原価ではなく残高で表示されます。
  • 売掛金:期末残高1,000、貸倒実績率2%で見積り → 貸倒引当金 = 1,000 × 2% = 20、BS上の純額 = 1,000 − 20 = 980。前期末の引当金が15で、当期に貸倒れによる取崩しがなければ、当期の繰入額は20 − 15 = 5(差額補充の前提)。取崩しが10あれば、繰入額は20 − 15 + 10 = 15です。

通常の取引に基づいて発生した債権に対する貸倒引当金繰入額又は貸倒損失は、異常なものを除き販売費として別に掲記します[1]。上の繰入額5は、PLでは販売費及び一般管理費に入ります。

PL・​BS・​CFへの​影響

評価勘定の増加は、PLの費用(減価償却費、貸倒引当金繰入額)を通じて純資産を減らします。BSでは資産の純額が小さくなります。現金の支出は伴わないため、間接法のCFでは非資金費用として加算(引当金の増加額は加算)します。設例では、建物の償却250と引当金の繰入5は、営業CFの調整項目になります。BSの表示方法(間接か直接か)が違っても、純額と損益は同じで、CFにも影響しません。

財務​モデル・​Excelでの​使い方

  • 3行で持つ:取得原価(または債権残高)、評価勘定、純額の3行を置き、純額だけを三表に接続します。
  • 固定資産:評価勘定の期末残高 = 期首 + 当期償却費 − 売却・除却に伴う取崩し。取得原価の行は、Capexの加算と売却・除却に伴う減少で更新します。
  • 債権:=売掛金×貸倒引当率で期末引当金を置き、繰入額は=期末引当金-期首引当金+当期取崩額で求めます(取崩しがなければ前期差)。比率の前提は過去実績から設定します。
  • 検算:純額=原価−評価勘定、BSの合計が一致しているかを確認します。

この​用語を​Excelで​「組める」​状態に​する

取得原価・​累計額・​純額の​関係を​行に​分けて、​償却や​引当金の​繰入が​三表へ​与える​影響を​数式で​追えるようになる。

三表​モデルの​教材で​固定資産と​引当金の​動きを​確認する →

実務家が​確認する​ポイントと​よく​ある​誤解

誤解1:「評価勘定は負債」→ 評価勘定は資産の控除科目で、貸方残高でも負債ではありません。賞与引当金のように、将来の支出に備えて負債として計上する引当金とは区別します。財務諸表等規則も、流動負債の引当金から「資産に係る引当金」を除いています[1]。

誤解2:「直接控除なら償却累計額の情報が失われる」→ 直接控除方式でも、各資産科目別または一括で累計額を注記します(連結財務諸表を作成している場合は個別の注記を省略できる)[1]。

誤解3:「自己株式も評価勘定の一種」→ 厳密には、資産の評価勘定ではなく純資産の控除項目です。ただし、本体の金額を直接減らさず控除項目として別掲する表示の考え方は共通します。

確認ポイント:BSが純額表示か、注記で累計額を確認できるかを見て、取得原価ベースの分析(償却率、老朽化度)に使える情報を集めます。

日本実務での​扱い

(2026年11月時点)有価証券報告書の財務諸表は財務諸表等規則に沿って作成され、有形固定資産の減価償却累計額は科目別に控除する形式での表示と、直接控除して注記する形式があります[1]。実務では、建物の取得原価・累計額をBSで示す会社と、純額を示して注記で累計額を示す会社が混在します。IFRSでも、減価償却累計額等を控除した帳簿価額が基本ですが、表示様式は各社の財務諸表に委ねられる部分が大きいため、比較の際は注記を確かめます。

面接・​モデルテストで​問われる​ポイント

Q:貸倒引当金は、BSのどこにどう表示されますか。
「売掛金など流動資産に属する債権の引当金は、その控除科目として流動資産に表示し、長期貸付金など投資その他の資産に属する債権の引当金は、投資その他の資産の控除科目とします。純額が回収見込額です。PLでは、通常の取引に基づく債権の繰入額を、異常なものを除き販売費及び一般管理費に計上します。現金は動かないので、CFでは引当金の増加額を加算します。」

深掘りの観点:間接控除と直接控除の違い、賞与引当金など負債性引当金との区別。

よく​ある​質問​(FAQ)

Q. 減価償却累計額は、売却すると消えますか。
A. 固定資産を売却・除却すると、対応する取得原価と累計額を両方取り崩し、差額(簿価)と売却価額の差が売却損益になります。

Q. 評価勘定は仕訳でどう扱いますか。
A. 資産の取得原価の勘定は動かさず、評価勘定の貸方に計上します(間接控除)。直接控除では資産の勘定を直接減らします。

出典・参考​(2026-11確認)

  1. e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第20条、第25条、第26条、第30条、第34条、第38条、第47条第4号、第66条、第87条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50000040059(2026年11月参照)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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