この記事で分かること

  • 活動基準予算編成(ABB)の定義と、増分予算との根本的な違い
  • 間接費の予算をコストドライバーから積み上げる仕組み
  • 検査工程を題材にした整数設例(生産計画との連動)
  • 日本の製造業での導入実態と向いている部門の見極め方

30秒で分かる定義

活動基準予算編成(Activity-Based Budgeting、略称ABB、読み方:えーびーびー)とは、活動基準原価計算(ABC:Activity-Based Costing)の考え方を予算編成に応用し、必要な「活動」の量からコストドライバーを通じて予算を積み上げる手法です。従来の予算編成が前年実績に一定率を加減する増分主義になりがちなのに対し、ABBは「どの活動にどれだけの資源が必要か」を出発点にする点が特徴です。

なぜ実務で重要なのか

FP&A・経営企画は、間接費(製造間接費・販管費)の予算が実態から乖離しやすい増分予算の限界を補う手法として、製造業の間接費配賦の精緻化にABBを活用します。製造・生産管理部門は、段取り回数・検査件数といった活動量を予算のドライバーとして扱うため、現場の業務量計画と予算が直接連動します。コスト企画・原価管理部門は原価企画と組み合わせ、目標原価の達成に必要な活動水準を予算に落とし込みます。

仕組み:増分予算との違い

観点従来の増分予算ABB(活動基準予算編成)
出発点前年度実績予算必要な活動(段取り・検査・出荷等)の洗い出し
配賦の考え方部門ごとに一律の伸び率を適用活動ごとのコストドライバー単価×活動量で積み上げ
間接費の精度実態と乖離しやすい活動量の変化を反映しやすい
向いている場面変化の少ない安定的な部門間接費比率が高く活動量が変動する製造・サービス部門

整数設例で確認する

設例(架空数値・単位:百万円)。ある工場の検査工程の来期予算をABBで積み上げます。検査1回あたりのコストドライバー単価(人件費・設備償却費等)は0.02、来期の生産計画から見込まれる検査回数は40,000回です。

検査工程の予算=0.02×40,000=800。前年度実績は生産量が32,000回相当で予算640(0.02×32,000)でした。従来の増分予算(前年比+5%)で計算すると640×1.05=672となり、実際に必要な活動量(40,000回)に基づく800との差は800-672=128に達します。生産計画の増加を織り込まないと、検査工程は予算不足に陥ることが数値からも確認できます。

PL・BS・CFへの影響

ABBで精緻化された間接費予算は、PL上の売上原価(製造間接費)・販管費の内訳に直接反映されます。活動量の見積りが甘いと、実績段階で予算超過が生じ、原価差異分析の対象になります。CFへの影響は、予算どおりに活動が発生すれば人件費・外注費等の支払いとして表れますが、ABB自体は資金計画そのものではなく、資金繰り予測の実務と組み合わせて初めて資金繰りへの影響が見えます。

財務モデル・Excelでの使い方

ABBはExcelでは「活動量×コストドライバー単価」の掛け算構造を活動ごとに並べたテーブルとして実装します。

  • 活動一覧シート:段取り・検査・出荷等の活動ごとにコストドライバー(回数・時間・件数)とドライバー単価を1行ずつ持つ
  • 生産計画との連動:活動量は生産計画・受注計画のセルを参照し、手入力を避ける
  • 部門予算への集計:活動ごとの予算をSUMIFで部門・費目別に集計し、年度予算の作り方で扱う全社予算のフォーマットに合流させる

この用語をExcelで「組める」状態にする

活動量とコストドライバー単価から間接費予算を積み上げ、生産計画の変動を予算に自動反映できる表を組めるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「ABBは全部門に適用すべき」→ 正しくは、活動量が安定していて間接費比率の低い部門では効果が薄く、コストドライバーの設計・データ収集の手間が予算編成の負担を過度に増やすことがあります。間接費比率が高く活動量の変動が大きい部門から優先導入するのが実務的です。

誤解2:「ABBを導入すればコストは自動的に下がる」→ 正しくは、ABBは予算を実態に即して積み上げる手法であり、コスト削減そのものを保証しません。コスト削減にはVA/VE活動など別の取り組みが必要です。

日本実務での扱い

(2026年8月時点)日本の製造業では、間接費配賦の精緻化を目的にABC/ABBの考え方を導入する企業が古くから見られますが、コストドライバーの特定・データ収集の負荷が大きく、全社的な予算編成の主軸としてではなく、特定の工場・製品ラインの原価分析に限定して活用される例が多くあります。日本公認会計士協会や企業会計基準委員会が管理会計手法として体系的な基準を設けているわけではなく、あくまで管理会計上の任意の手法として各社が実務に合わせて設計します。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:ABB(活動基準予算編成)と従来の増分予算の違いを説明してください。
「増分予算は前年度実績に一定の伸び率を掛けて予算を作る方法で、実態の活動量の変化を反映しにくいという弱点があります。ABBは活動基準原価計算の考え方を使い、必要な活動量にコストドライバー単価を掛けて予算を積み上げるため、生産計画の変動を予算に反映しやすくなります。一方で、コストドライバーの特定とデータ収集の負荷が大きいという課題もあります。」(30秒回答例)

深掘りでは「どの部門にABBを優先導入すべきか」「ゼロベース予算との違い」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. ABBとゼロベース予算(ZBB)は同じですか?
A. 異なります。ZBBは前年度実績を一切前提とせず全ての予算項目をゼロから正当化する手法で、ABBは活動量とコストドライバーの関係を使って積み上げる手法です。両者は増分主義を排するという点で似ていますが、積み上げの論理が異なります。

Q. ABBの導入に向いている業種は何ですか?
A. 間接費比率が高く、生産・受注量の変動が大きい製造業やサービス業が向いています。段取り替え・検査・出荷といった活動が生産量と比例しない場合、増分予算では予算と実態の乖離が大きくなりやすいためです。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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