この記事で分かること
- GMAT Focus Edition・GREそれぞれの試験構成とスコア範囲(GMAC・ETS公式情報、2026年8月確認)
- 2023年以降の両試験の変更点(GMAT Focus Editionへの刷新、GREの短縮改定)
- HBS・Wharton・Stanford GSB・INSEADが公式に公表しているスコア情報の読み方
- 金融キャリア志望者が出身背景別にどう学習順序を組むべきか
結論:どちらの試験も「対策の設計次第で伸びる」試験であり、まず自分の弱点セクションを特定することが出発点
GMAT Focus EditionもGREも、地頭や英語力だけで決まる試験ではありません。GMAT Focus EditionはGMAC公式によればTotal Score205〜805(5点刻み)・セクションスコア60〜90の3セクション構成、GREはETS公式によればVerbal・Quantitativeそれぞれ130〜170(1点刻み)・Analytical Writing 0〜6(0.5点刻み)という設計です。出題形式・時間配分・スコアの伸びやすいセクションが明確に決まっているため、自分の得意不得意を早期に把握し、残り時間を「伸びしろの大きいセクション」に配分することが、闇雲に問題演習を積むより効率的な戦略になります。
MBA全体の費用対効果や国内外プログラム比較は日本でMBAは投資銀行・PEキャリアに有効か、Master in Financeとの違いはMaster in Financeとはで扱っているため、本記事では出願実務の中でも「どちらの試験を受け、どう対策するか」というスコア戦略に絞って解説します。エッセイ・推薦状の書き方は別途扱う出願実務の記事に譲ります。
GMAT Focus Editionの試験構成とスコア:2023年以降の変更点
現在提供されているGMATは、2023年11月に登場し2024年2月から唯一の受験形式となった「GMAT Focus Edition」です。GMAC公式(2026年8月確認)によれば、試験はQuantitative Reasoning(21問・45分)、Verbal Reasoning(23問・45分)、Data Insights(20問・45分)の3セクション・合計64問で構成され、各セクションはTotal Scoreへの寄与が均等に重み付けされています。全体の受験時間は2時間15分に加えて任意の10分休憩が1回取得でき、さらに「Select Section Order」機能により受験者が3セクションの実施順序を自分で選べる点も公式に明記されています。
旧GMAT(GMAC公式が「GMAT 10th Edition」と呼ぶ従来版)からの主な変更点は次の3点です。第一に、Quantitativeセクションの問題数が31問から21問へ削減され、旧来のData Sufficiency形式の問題がQuantitativeセクションから姿を消しました。第二に、Verbalセクションが36問から23問へ削減され、文法知識を問うSentence Correction形式が廃止されました。第三に、記述式のEssay(AWA)が完全に廃止され、全問が多肢選択式に統一されています。代わりに新設されたData Insightsセクションは、旧来のIntegrated Reasoning(複数資料の統合読解)とData Sufficiency(十分性判定)の両方の出題タイプを引き継いでおり、GMAC公式によればこのセクションに限りオンスクリーン電卓が利用可能です。
スコアはTotal 205〜805(5点刻み・全スコアが5で終わる)、各セクション60〜90の範囲で算出され、3セクションの合計から算出される点は変わりませんが、スコアスケール自体が旧GMATの200〜800とは別物になっている点に注意が必要です。旧GMATの730点とFocus Editionの685点を単純比較することはできず、GMAC公式ページによればTotal Score・Quantitative Reasoning・Verbal Reasoningそれぞれについて、新旧2つの試験のスコア分布をパーセンタイルで対応させる「Score Concordance Table」が公表されており、相対的な競争力を把握する際にはこの換算表を介して確認することが推奨されています。
GREの試験構成とスコア:2023年9月の短縮改定
GREもGMATと同時期に大きな改定を受けています。ETS公式(2026年8月確認)によれば、2023年9月22日以降のGRE General TestはAnalytical Writing(1課題・30分)、Verbal Reasoning(Section1:12問18分、Section2:15問23分)、Quantitative Reasoning(Section1:12問21分、Section2:15問26分)の5セクションで構成され、全体の受験時間は約1時間58分です。改定前は3時間45分・6セクション構成で不採点の追加セクションも含まれていましたが、改定後は不採点セクションが撤廃され、受験時間が大幅に短縮されました。
スコアはVerbal Reasoning・Quantitative Reasoningがそれぞれ130〜170(1点刻み)、Analytical Writingが0〜6(0.5点刻み)で算出され、スコアの有効期間はETS公式によれば受験日から5年間です。GMATが単一のTotal Scoreで語られることが多いのに対し、GREはVerbalとQuantitativeが別スコアとして併記される点が特徴で、出願先の学校がどちらをどの程度重視するかは学校ごとに異なります。
GMAT FocusとGRE、金融キャリア志望者はどちらを選ぶべきか
両試験を制度面で比較すると、次のような違いがあります。金融キャリアを志望する場合に特に押さえておきたいのは、GMATのQuantitative ReasoningとData Insightsは電卓の使用可否が分かれる一方、GREのQuantitative Reasoningは全問で電卓(オンスクリーン)が使用できる点、そしてGMATのVerbalは長文読解・批判的推論(Critical Reasoning)中心である一方、GREのVerbalは語彙力を問うText Completion・Sentence Equivalence形式が一定の比重を占める点です。
| 観点 | GMAT Focus Edition | GRE General Test |
|---|---|---|
| セクション構成 | Quantitative Reasoning・Verbal Reasoning・Data Insightsの3セクション(各45分) | Analytical Writing・Verbal Reasoning×2・Quantitative Reasoning×2の5セクション |
| 合計受験時間 | 2時間15分(+任意10分休憩) | 約1時間58分 |
| スコア範囲 | Total 205〜805(5点刻み)、セクション60〜90 | Verbal・Quantitativeそれぞれ130〜170(1点刻み)、AW 0〜6(0.5点刻み) |
| 記述式課題 | なし(全問多肢選択式) | あり(Analytical Writing 1課題) |
| 電卓の使用可否 | Data Insightsのみ使用可(Quantitativeは不可) | Quantitative Reasoningで使用可 |
| セクション順序選択 | 受験者が実施順序を選択可能(Select Section Order) | Analytical Writingが必ず最初(順序固定) |
| スコア有効期間 | GMAC公式ページに本記事執筆時点で明確な年数の記載を確認できず(出願先の募集要項で個別確認が必要) | 5年間(ETS公式) |
この比較から分かる実務的な示唆は、「電卓を使わない計算に苦手意識がある場合はGREが相対的に取り組みやすい」「長文の批判的推論・データ分析に強みがある場合はGMATが相対的に取り組みやすい」という傾向です。ただしこれはあくまで一般的な傾向であり、出願先が特定の試験を推奨・優遇するかどうかは学校によって異なるため、次章のようにまず志望校の公式情報を確認することが前提になります。
トップMBAプログラムが公式に公表しているスコア情報
スコアと出願の関係については、各校が公式サイトで公表している情報のみを根拠にすべきです。第三者の集計サイトが示す「平均点」「ボーダーライン」は学校側が正式に認めた数値ではないため、本記事では各校の公式ページで直接確認できた情報のみを掲載します。
| スクール | 公式に確認できた情報 |
|---|---|
| Harvard Business School(Class of 2027) | GMAT Focus:median 685(middle80% 645〜735)/GMAT 10th Edition(旧版):median 730(690〜770)/GRE:median V164・Q164(middle80% V158〜168・Q159〜169) |
| Wharton School(Class of 2026) | GMAT平均732/GRE平均V163・Q162 |
| Stanford GSB | 「GMAT・GREに最低点は設けておらず、両試験に優先順位もない」と公式に明記。1回の受験セッションのスコアのみ提出可(スーパースコア非採用) |
| INSEAD | 最低点は設けず、GMAT Focus:Verbal 60パーセンタイル(スコア80)・Quantitative/Data Insights 66パーセンタイル(スコア80・77)を推奨。GRE:Verbal・Quantitativeとも80パーセンタイル以上を推奨。複数回受験時は最高スコアを最重視(スーパースコア採用) |
この表から読み取れる実務上の含意は3点です。第一に、HBSの事例のように「GMAT」表記と「GMAT 10th Edition」表記が併記される場合があるのは、Focus Editionが唯一の受験形式となった2024年2月以降も、旧版のスコアが有効期間内であれば出願に使える受験者が一定数存在するためです。旧版とFocus Editionのスコアを単純に並べて優劣を語ることはできません。第二に、Stanford GSBのように「最低点なし・優先順位なし」と明言する学校がある一方、INSEADのようにセクションごとの推奨パーセンタイルを具体的に公開している学校もあり、対応は学校ごとに大きく異なります。第三に、複数回受験したスコアの扱い(最高スコアを採用するか、単一セッションのみを見るか)も学校ごとに方針が異なるため、再受験の是非は志望校の公式方針を確認してから判断すべきです。
日本国内の英語MBAにおけるGMAT/GRE要件
日本国内でも、英語で運営されるMBAプログラムの一部はGMAT・GREを出願要件としています。一橋大学国際企業戦略専攻(HUB ICS)は公式サイト(2026年8月確認)で、GMATまたはGREのスコアを出願評価の要素として位置づけ、スコアは各回の面接日から5年以内のものである必要があると明記しています。同要項ではTOEFL/IELTSが任意提出とされているのに対し、GMAT/GREはより重視される位置づけです。早稲田大学大学院経営管理研究科(WBS)も、国際MBA・MSc in Financeプログラムの「Application with GMAT or GRE」区分では原則としてGMATまたはGREのスコア提出が必須(事業承継者向けの別区分では不要)と公式サイト(英語版・2026年8月確認)に明記しており、GPA・GMAT/GRE・英語試験いずれにも最低点は設けていない一方で、2024年度入学分からGMAT/GREのオンライン受験(自宅受験)版のスコアは受け付けていない、テストセンターでの受験に限定するという運用が確認できます。
一方で、日本語で運営される国内MBAプログラムの多くはGMAT・GREを必須としていません。「英語で運営される国際色の強いプログラムかどうか」がGMAT/GRE要否の目安の一つになりますが、最終的な要否・有効期限は志望校ごとに個別確認が必要です。
出願までの学習計画:出身背景別の優先順位
以下は説明用の一般的な学習順序の考え方であり、特定の学習期間・スコア到達を保証するものではありません。出身背景によって伸ばしやすいセクションと後回しにできない弱点が異なります。
理系・定量分析に強い出身者(エンジニア、理系院卒、クオンツ志望者など)は、GMATのQuantitative ReasoningやGREのQuantitative Reasoningでは比較的短期間でスコアが伸びやすい一方、GMATのVerbal Reasoning(Critical Reasoning・Reading Comprehension)や、GREのVerbal Reasoning(語彙問題を含むText Completion・Sentence Equivalence)で苦戦しやすい傾向があります。学習初期から長文読解・語彙対策に時間を配分し、直前期にQuantitative・Data Insightsで得点を積み増す設計が現実的です。
文系・金融未経験の出身者は、逆にVerbalセクションよりも、GMATのData Insights(旧Data Sufficiency・Integrated Reasoningの複合形式)やQuantitative Reasoningの基礎的な数的処理でつまずきやすい傾向があります。未経験からIBD・FASを目指す学習ロードマップでも触れているとおり、財務モデリングの基礎学習と並行して、四則演算・比率計算・グラフ読み取りといった土台の数的処理を早期に固めておくと、Quantitative・Data Insightsの学習効率が上がります。
すでに投資銀行・PE・コンサルで実務経験があり出願準備の時間が限られる社会人は、まず模擬試験でセクション別の現在地を把握し、伸びしろの大きいセクションに残り学習時間を集中させる「診断先行型」の計画が効率的です。試験対策と並行して、モデリング力・実務での成果物といった出願書類全体の完成度も求められるため、GMAT/GRE対策だけに時間を偏らせすぎない配分が必要になります。ファイナンス実務側のスキル面の伸びしろを確認したい場合は、ファイナンス人材のAIスキルマップで学習領域を整理してから、GMAT/GRE対策とのバランスを検討することをおすすめします。
試験対策の前に、今の実務スキルの立ち位置を確認する
GMAT/GREのスコアはMBA出願の一要素にすぎません。出願準備と並行して、財務モデリングの基礎力やキャリア適性を確認しておくと、出願全体の優先順位づけがしやすくなります。
出願実務における位置づけ:他の出願書類との関係
GMAT/GREのスコアは、出願書類全体の中の一要素です。Stanford GSBが「スコアは専門的背景・経験・志向性などと合わせて評価する全体像の一部」と公式に位置づけているように、多くのトップスクールはスコア単体で合否を決めていません。エッセイ・推薦状の作成実務についてはMBAエッセイ・推薦状の書き方で扱っているため、あわせて確認しておくと出願全体の準備計画が立てやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. GMAT Focus EditionとGRE、金融キャリア志望者にはどちらが有利ですか。
A. 現時点で確認できる公式情報からは、どちらが一律に有利とは言えません。Stanford GSBのように両試験に優先順位を設けないと明言する学校がある一方、INSEADのようにセクション別の推奨パーセンタイルを公開している学校もあり、対応は学校ごとに異なります。志望校の公式方針を確認したうえで、自分の得意分野(電卓を使わない定量処理か、語彙・長文読解か)に合わせて選ぶのが基本的な考え方です。
Q. 旧GMAT(200〜800点満点)とGMAT Focus Edition(205〜805点)のスコアを比較できますか。
A. スケール自体が異なるため単純比較はできません。GMACはスコア換算表(Score Concordance Table)を公表しており、パーセンタイルを介して対応関係を確認する必要があります。
Q. GMAT/GREのスコアに有効期限はありますか。
A. GREはETS公式によれば受験日から5年間です。GMAT Focus EditionについてはGMAC公式ページ上で本記事執筆時点において明確な年数記載を確認できておらず、出願先の募集要項に記載された有効期限(一橋ICSは面接日から5年以内と明記)を個別に確認する必要があります。WBSのように有効期限を公式サイトの一般ページでは明記していない学校もあり、詳細な募集要項での確認が欠かせません。
Q. 日本国内のMBAプログラムでもGMAT/GREは必要ですか。
A. 一橋大学ICS・早稲田大学WBSのAO入試のように、英語で運営される国際色の強いプログラムはGMAT/GREを出願要件としています。一方、日本語で運営される国内MBAプログラムの多くは必須としていません。志望校ごとに個別確認が必要です。
Q. 何点を目指せばよいですか。
A. 「何点あれば合格する」という一律の基準は存在しません。本記事で紹介したHBS・Wharton等のmiddle80%レンジや平均値、INSEADの推奨パーセンタイルはあくまで公式に公表された参考情報であり、スコアだけで合否が決まるわけではないとStanford GSBも公式に説明しています。志望校の公式情報を確認しながら、自分の出願全体の中での優先順位を判断してください。
まとめ
GMAT Focus Editionは2023年11月の刷新でQuantitative・Verbalの問題数削減とEssay廃止、Data Insightsセクションの新設が行われ、Total Score205〜805・セクション60〜90という新スケールになりました。GREも2023年9月に受験時間が約1時間58分へ短縮され、不採点セクションが撤廃されています。トップMBAプログラムのスコア方針は学校ごとに大きく異なり、Stanford GSBのように最低点・優先順位を設けない学校もあれば、INSEADのように推奨パーセンタイルを具体的に公開している学校もあります。日本国内でも一橋ICS・WBSの英語プログラムはGMAT/GRE提出を求めており、志望校の公式情報を出発点に、自分の出身背景に合わせた学習順序を組むことが対策の基本になります。
スコア対策と並行して、実務で評価されるモデリング力を確認する
MBA出願を検討する場合でも、入社後・入学後に評価されるのは最終的に財務モデリングや企業分析の実務力です。GMAT/GRE対策と並行して、自分の実務スキルの立ち位置を確認しておくことをおすすめします。
出典・参考(2026年8月確認)
- GMAC公式「Details Of New GMAT Exam Revealed」(GMAT Focus Editionの試験構成・出題形式・従来版からの変更点) https://www.gmac.com/resources/learners/how-to-apply/exams-preparation/new-gmat-exam-details
- GMAC公式「GMAT Exam Scores」(Total Score205〜805・セクションスコア60〜90の記載) https://www.gmac.com/gmat-other-assessments/about-the-gmat-focus-edition/exam-scores
- ETS公式「GRE General Test Structure」(2023年9月改定後のセクション構成・受験時間) https://www.ets.org/gre/test-takers/general-test/prepare/test-structure.html
- ETS公式「GRE General Test Content & Structure」(セクション別問題数・時間の詳細) https://www.ets.org/gre/score-users/about/general-test/content-structure.html
- ETS公式「GRE General Test Scoring & Reporting」(スコア範囲・有効期間) https://www.ets.org/gre/score-users/about/general-test/scoring.html
- Harvard Business School公式「Class Profile」(Class of 2027のGMAT・GREスコア) https://www.hbs.edu/mba/admissions/class-profile
- Wharton School公式「Class Profile」(Class of 2026のGMAT・GRE平均) https://mba.wharton.upenn.edu/class-profile/
- Stanford GSB公式「GMAT & GRE」(最低点なし・優先順位なし・スーパースコア非採用の方針) https://www.gsb.stanford.edu/programs/mba/admission/application/test-scores/gmat-gre
- INSEAD公式「MBA Programme FAQs」(GMAT/GRE推奨パーセンタイル・スーパースコア方針・有効期限) https://www.insead.edu/master-programmes/master-business-administration/faqs
- 一橋大学国際企業戦略研究科(ICS)公式「MBA (How to Apply)」(GMAT/GRE要件・有効期限) https://www.ics.hub.hit-u.ac.jp/mba/apply/
- 早稲田大学大学院経営管理研究科(WBS)公式英語版「Admissions」(GMAT/GRE最低点なしの方針) https://www.waseda.jp/fcom/wbs/en/applicants/admission
- 早稲田大学大学院経営管理研究科(WBS)公式英語版「FAQ」(GMAT/GRE必須区分・オンライン受験版不可の運用) https://www.waseda.jp/fcom/wbs/en/applicants/faq
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