この記事で分かること
- ウィリアムズ法(1968年)が米国の証券取引所法に加えた、大量保有の開示(制定時10%超、1970年改正で5%超)と公開買付けの規律
- Schedule 13D(5営業日以内)、最短20営業日の買付期間、撤回権、按分、全保有者・最高価格ルール
- 日本の公開買付制度・大量保有報告制度との違い(強制公開買付けの有無など)を対照表で整理
- 部分買付けの按分を整数設例で計算
30秒で分かる定義
ウィリアムズ法(Williams Act)とは、1968年7月29日に成立した米国の連邦法(Public Law 90-439)で、1934年証券取引所法を改正し、上場株式などを大量に取得した者の開示義務と、公開買付け(テンダーオファー)の開示・手続の規律を導入したものです。制定時の開示の閾値は10%超で、1970年の改正(Public Law 91-567)で現在の5%超に引き下げられました[6][7]。現在は同法に基づく証券取引所法第13条(d)と第14条(d)・(e)、およびSECの規則(Regulation 13D-G、Regulation 14D・14E)として運用されています[1][2]。本ページは海外実務の制度として説明し、日本の制度との違いを示します。
なぜ実務で重要なのか
米国上場企業の買収、米国上場の日本企業株式の取得、米国でのアクティビスト活動は、いずれもこの規律を前提に進みます。クロスボーダーM&AのFA・弁護士は、取得の開示時期と公開買付けの期間・条件を日米で別々に設計します。アクティビスト・ヘッジファンドにとって Schedule 13D の提出は、保有と目的が公になる節目です(アクティビスト投資家)。日本企業の投資家対応部門も、米国株主の13D提出の意味を理解しておく必要があります。
仕組み:主な規律と日本との対照
| 項目 | 米国(ウィリアムズ法とSEC規則) | 日本(金融商品取引法) |
|---|---|---|
| 5%超の開示 | Schedule 13D を5営業日以内(2024年2月5日施行の改正前は10日以内)[8] | 大量保有報告書を5日(休日を算入しない)以内 |
| 強制公開買付け | 一定割合の取得で公開買付けを義務付ける連邦の規定はないとされる | 市場内外の取得で30%超、市場外の取得で5%超など(2026年5月1日施行) |
| 買付期間 | 最短20営業日(Rule 14e-1)[10] | 20営業日以上60営業日以内 |
| 応募の撤回 | 買付期間中は撤回可(Rule 14d-7。後続応募期間(subsequent offering period)中は撤回権を付けなくてよい)[11] | 公開買付期間中はいつでも契約を解除可 |
| 応募超過時 | 部分買付けは期間中の応募数に応じて按分(Rule 14d-8)[12] | あん分比例方式。買付後の所有割合が3分の2以上となる場合は全部買付けの義務 |
| 価格 | 全保有者に開放し、最も高い対価を全員に(Rule 14d-10)[13] | 均一の条件(応募株主等の間で均一の価格) |
| 対象会社の態度 | 開始から10営業日以内に推奨・拒否・中立等と理由を表明(Rule 14e-2)[14] | 公告日から10営業日以内に意見表明報告書を提出 |
米国の根拠は、13Dの期限がSECの2023年の改正リリース[1]、買付期間・撤回権・按分・全保有者最高価格・対象会社の態度表明が1999年のSECリリースと現行規則です[2]。適用範囲は規則ごとに異なり、Regulation 14D(Rule 14d-7・14d-8・14d-10 など)は取引所法第12条で登録された株式等への公開買付けで買付後の保有が5%超となるものに、Regulation 14E(Rule 14e-1・14e-2 など)は原則としてすべての公開買付けに適用されます。外国民間発行体の株式で米国株主の保有が10%以下の場合(Tier I)などには適用の免除・特例があります[7][9]。日本の根拠は金融商品取引法第27条の2・第27条の10・第27条の12・第27条の13・第27条の23と同法施行令第8条です[3][4]。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。米国上場のX社株式について、買付予定数6,000,000株の部分的な公開買付けに、期間中9,000,000株の応募がありました。
3,000株を応募した株主の買付数 = 3,000 × 6,000,000 ÷ 9,000,000 = 2,000株
按分は期間中に応募したすべての株式を対象に行うため、早く応募した株主が優先されることはありません[2]。期間の途中で買付価格を引き上げた場合も、全保有者・最高価格ルールにより、引上げ前に応募した株主にも引上げ後の価格が支払われます。日本の部分買付けでもあん分比例方式で同様の計算になります[3]。
開示・規制上の位置付け
ウィリアムズ法の規律は、取得の段階(13条(d):保有の開示)と公開買付けの段階(14条(d)・(e):開示・手続・不正行為の禁止)に分かれます。13Dの提出は買収の意図を市場に知らせる最初の公式開示で、提出までの期間中も取得を続けられるため、期限の短縮は取得戦略に影響しました[1]。日本では、取得の段階で5%超の開示(大量保有報告書)に加え、30%超などの取得そのものに公開買付けを義務付けるため、取得の方法が制約される点が米国と大きく異なります。
実務での調べ方・確認手順
- SECのEDGARで開示を追う:Schedule 13D・13G、公開買付者の Schedule TO、対象会社の Schedule 14D-9 を時系列に並べます。
- 規則の原文で期間を確かめる:買付期間・延長・撤回権・後続応募期間(現行の Rule 14d-11 では3営業日以上。全部買付けであることなどが条件)の扱いを、SECのリリースだけでなく現行規則の条文で確認します[15]。
- 日米の両方に当たるか確認する:日本企業の株式でも、米国の株主が多い場合は米国の公開買付規制が問題になることがあるため、弁護士に適用関係を確認します。
この用語を実務で
日米の公開買付けの期間・按分・価格ルールの違いを踏まえて、クロスボーダー案件のスケジュールを組めるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「米国でも3分の1や30%を超えると公開買付けが必要」→ 正しくは、連邦法には日本のような強制公開買付けの規定はないとされます。支配権の取得を制約するのは、州法の買収規制や会社の定款・ライツプランなどです。
誤解2:「13Dの提出期限は10日」→ 正しくは、2024年2月5日施行の改正で5営業日に短縮されています[1]。
誤解3:「早く応募した株主が優先される」→ 正しくは、部分買付けの按分は期間中の応募全体が対象です[2]。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)日本の公開買付けは、2024年の金融商品取引法改正(2026年5月1日施行)で強制公開買付けの閾値が30%に引き下げられ、市場内取引も対象になりました[5]。米国との比較では、日本は取得の段階で公開買付けを強制する点、米国は開示と手続の公正を中心に規律し、支配権の争いを州法や取締役会の判断に委ねる部分が大きい点が違いとして挙げられます。日本の制度の詳細は強制公開買付制度を参照してください。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:日米の公開買付規制の最も大きな違いは何ですか。
「日本は一定割合を超える取得そのものに公開買付けを義務付けますが、米国のウィリアムズ法は5%超の保有の開示と、公開買付けを行う場合の期間・撤回権・按分・最高価格などの手続を定めるもので、取得を強制的に公開買付けに乗せる規定はないとされます。そのため米国では、13Dを出した後も市場で買い増したり、合併契約による買収を選んだりする余地が大きくなります。」
よくある質問(F AQ)
Q. Schedule 13D と 13G の違いは何ですか?
A. 5%超の保有者は13Dの提出が原則で、支配目的を持たない一定の機関投資家や、支配目的がなく保有が20%未満の受動的な投資家などは、記載事項の少ない13Gで代えることができます[8]。13Gの適格を失った場合も5営業日以内に13Dを提出します[1]。
Q. 「ウィリアムズ法」という名前の法律を引けば条文がありますか?
A. 1968年の改正法の通称で、現在の規律は証券取引所法第13条・第14条とSEC規則に組み込まれています。実務では個々の条・規則番号で参照します。
出典・参考(2 026-11確認)
- U.S. Securities and Exchange Commission「Modernization of Beneficial Ownership Reporting」(Release No. 33-11253, 2023年10月、2024年2月5日施行)Ⅰ・Ⅱ.A(Schedule 13D の期限、Public Law 90-439(1968年7月29日)への言及). https://www.sec.gov/files/rules/final/2023/33-11253.pdf(2026年11月参照)
- U.S. Securities and Exchange Commission「Regulation of Takeovers and Security Holder Communications」(Release No. 33-7760, 1999年10月)(最短20営業日、対象会社の態度表明10営業日、後続応募期間、Rule 14d-7・14d-10 等). https://www.sec.gov/rules-regulations/1999/10/regulation-takeovers-security-holder-communications(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「金融商品取引法」(昭和二十三年法律第二十五号)第27条の2第1項・第3項、第27条の10第1項、第27条の12第1項、第27条の13第5項、第27条の23第1項. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000025(2026年11月参照)
- e-Gov法令検索「金融商品取引法施行令」(昭和四十年政令第三百二十一号)第8条第1項・第5項第3号、第13条の2第1項. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000321(2026年11月参照)
- 金融庁「令和6年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等に関するパブリックコメントの結果等について」(2025年7月4日公表、2026年4月15日更新). https://www.fsa.go.jp/news/r7/shouken/20250704/20250704.html(2026年11月参照)
- Office of the Law Revision Counsel「15 U.S.C. 78m: Periodical and other reports」(d)(1)、Amendments「1968—Pub. L. 90-439 added subsecs. (d) and (e)」「1970—Pub. L. 91-567 … substituted “5 per centum” for “10 per centum”」(Public Law 119-136 時点). https://uscode.house.gov/us/usc/t15/s78m(2026年11月参照)
- Office of the Law Revision Counsel「15 U.S.C. 78n: Proxies」(d)(1)、(e)、Amendments 1968・1970(Public Law 119-136 時点). https://uscode.house.gov/us/usc/t15/s78n(2026年11月参照)
- eCFR「17 CFR 240.13d-1 Filing of Schedules 13D and 13G」(a)・(b)(1)・(c)(2026年11月3日時点). https://www.ecfr.gov/current/title-17/section-240.13d-1(2026年11月参照)
- eCFR「17 CFR 240.14d-1 Scope of and definitions applicable to Regulations 14D and 14E」(a)・(c)・(d)(2026年11月3日時点). https://www.ecfr.gov/current/title-17/section-240.14d-1(2026年11月参照)
- eCFR「17 CFR 240.14e-1 Unlawful tender offer practices」(a)(2026年11月3日時点). https://www.ecfr.gov/current/title-17/section-240.14e-1(2026年11月参照)
- eCFR「17 CFR 240.14d-7 Additional withdrawal rights」(a)(1)・(2)(2026年11月3日時点). https://www.ecfr.gov/current/title-17/section-240.14d-7(2026年11月参照)
- eCFR「17 CFR 240.14d-8 Exemption from statutory pro rata requirements」(2026年11月3日時点). https://www.ecfr.gov/current/title-17/section-240.14d-8(2026年11月参照)
- eCFR「17 CFR 240.14d-10 Equal treatment of security holders」(a)(2026年11月3日時点). https://www.ecfr.gov/current/title-17/section-240.14d-10(2026年11月参照)
- eCFR「17 CFR 240.14e-2 Position of subject company with respect to a tender offer」(a)(2026年11月3日時点). https://www.ecfr.gov/current/title-17/section-240.14e-2(2026年11月参照)
- eCFR「17 CFR 240.14d-11 Subsequent offering period」(2026年11月3日時点). https://www.ecfr.gov/current/title-17/section-240.14d-11(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。