この記事で分かること
- SWIFT(通信網)とコルレス銀行網(資金移動の実体)の役割の違い
- 国際送金がノストロ・ボストロ口座を通じてどう決済されるかの仕組み
- コルレス経由の送金手数料を整数設例で確認する方法
- 日本実務での位置付けと、経済制裁(SWIFT遮断)が持つ実務的な意味
30秒で分かる定義
SWIFT(すうぃふと、国際銀行間通信協会:Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)とは、世界の金融機関同士が送金指図等のメッセージを標準化された形式でやり取りするための通信ネットワークです。SWIFT自体は資金を保有・移動させる決済システムではなく、あくまで「指図を正確・安全に伝える」通信インフラです。実際の資金移動は、銀行同士が互いに保有し合う口座関係、すなわちコルレス契約に基づくコルレス銀行網を通じて行われます。
なぜ実務で重要なのか
トレジャリー・貿易金融担当は、クロスボーダーの支払・受取がどの経路をたどり、いつ着金するかを把握するために、SWIFTメッセージとコルレス決済の違いを理解する必要があります。銀行の国際業務・オペレーション部門は、コルレス先銀行とのノストロ(自行が他行に持つ口座)・ボストロ(他行が自行に持つ口座)関係の管理そのものが業務の中核です。コンプライアンスは、SWIFTメッセージに含まれる送金人・受取人情報を用いた制裁対象者スクリーニングを行います。M&A・クロスボーダー投資の実務でも、買収対価の国際送金がこの仕組みに依拠します。為替リスクの基礎全般は為替(FX)の基礎と為替リスク管理で解説しています。
仕組み(資金の流れ)
SWIFTのメッセージ(代表的には顧客送金を指図するMT103形式)は、送金銀行から受取銀行へ即座に届きますが、それだけでは資金は動きません。実際の決済は次のような経路をたどります。
- ①送金指図:送金銀行がSWIFTメッセージで受取銀行(またはその間のコルレス銀行)に送金内容を通知する。
- ②口座間の決済:送金銀行と受取銀行が直接のコルレス関係を持たない場合、両行が共通して口座を持つ中継銀行(コルレス銀行)を経由し、ノストロ・ボストロ口座間の帳簿上の振替で資金が移動する。
- ③着金:最終的に受取銀行が受取人の口座に入金する。
この経路が長くなるほど(中継銀行が増えるほど)、各行が手数料を差し引く可能性があり、着金額や所要時間に影響します。送金人・受取人のどちらが手数料を負担するかは、OUR(送金人が全額負担)・SHA(双方分担)・BEN(受取人負担)という3つの指定方式で管理されます。
整数設例で確認する
設例(架空数値・単位:円)。送金元本50,000,000円(5,000万円)を、コルレス銀行2行を経由して送金するケースを考えます。手数料指定はBEN(受取人負担)とします。
- 中継コルレス銀行A:手数料2,000円
- 着金銀行のリフティングチャージ:2,500円
着金額 = 50,000,000 - 2,000 - 2,500 = 49,995,500円。もし手数料指定がOUR(送金人負担)であれば、送金人が別途4,500円を支払い、受取人には満額50,000,000円が着金します。実務では着金額が予定より少ないというクレームの多くが、このBEN指定による中継銀行手数料の差し引きに起因しており、資金繰り予測の段階でどちらの指定かを確認しておくことが重要です。
リスク配分への影響
コルレス経路が長くなるほど、①各行の手数料による着金額の目減り、②中継のたびに生じる時間差(多くは1〜2営業日)による資金繰りへの影響、③各コルレス銀行の信用リスク・オペレーショナルリスクの積み重なり、という3つのリスクが発生します。さらに近年は、経済制裁の一環として特定国の金融機関をSWIFTネットワークから排除する措置が実際に取られた事例があり、SWIFTへの接続自体が国際決済インフラへのアクセスを左右する地政学的なリスク要因になっています。
実務での調べ方・確認手順
- 送金先銀行のBIC(SWIFTコード)を事前に確認し、中継銀行を挟まず直接のコルレス関係があるかを送金銀行に確認する。
- 手数料指定(OUR/SHA/BEN)を明示し、着金額の見込みを資金繰りモデルに反映する。
- 大口・急ぎの送金では、SWIFT gpi等の追跡サービスで送金の進捗(どのコルレス銀行を経由中か)を確認できるかを事前に把握しておく。
- 制裁対象国・地域が関係する取引では、コルレス経路そのものが利用できない可能性を早期に確認する。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「SWIFTが送金する」→ 正しくは、SWIFTは指図を伝える通信網にすぎず、資金そのものはコルレス銀行間の口座を通じて動きます。SWIFT自体は資金を保有していません。
誤解2:「コルレス銀行があれば即時着金する」→ 正しくは、中継銀行の数だけ処理に時間がかかり、営業日単位のタイムラグが生じるのが通常です。着金予定日を前提にした資金繰りには余裕を持たせる必要があります。
日本実務での扱い
日本の銀行が行う外国為替業務は、国内の資金決済インフラである全銀システムとは別に、コルレス銀行網とSWIFTメッセージに依拠して行われます。クロスボーダーの資本取引・支払は外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく報告・規制の対象となる場合があり、金融機関はマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の観点から、SWIFTメッセージに含まれる送金人・受取人情報を用いた確認を行っています(2026年8月時点)。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:SWIFTとコルレス銀行の役割の違いを説明してください。
「SWIFTは金融機関同士が送金指図等のメッセージを標準化してやり取りするための通信ネットワークであり、それ自体は資金を移動させません。実際の資金移動は、銀行同士が保有し合うコルレス口座(ノストロ・ボストロ)間の振替を通じて行われます。SWIFTは指図の伝達、コルレス銀行網は資金の実体的な移動を担うという役割分担になります。」(30秒回答例)
深掘りでは「SWIFTから排除されるとどのような実務上の支障が生じるか」「OUR・SHA・BENの違い」が問われます。
よくある質問(FAQ)
Q. SWIFTコードとIBANは同じものですか?
A. 異なります。SWIFTコード(BIC)は銀行・支店を識別するコードで、IBANは口座そのものを識別する国際的な口座番号の規格です。多くの国際送金では両方の情報が必要です。
Q. 送金手数料を安く抑える方法はありますか?
A. 直接のコルレス関係を持つ銀行を選ぶ、手数料指定をOURではなくSHAにする、といった方法がありますが、経路は送金銀行と受取銀行の関係により制約されるため、事前に見積もりを確認するのが確実です。
出典・参考(2026-08確認)
- 日本銀行 決済システムレポート関連資料 https://www.boj.or.jp/
- 財務省「外国為替及び外国貿易法」関連資料 https://www.mof.go.jp/
- e-Gov法令検索「外国為替及び外国貿易法」 https://elaws.e-gov.go.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。