この記事で分かること

  • ストリップセールの定義と、単一ファンド売却との違い
  • プロラタ(比例配分)方式がチェリーピッキングを防ぐ仕組み
  • 整数設例で確認する、複数ファンドの一括ストリップ売却の価格計算
  • 国内LP実務でのハードル(LPS持分の譲渡制限)を解説(2026年8月時点)

30秒で分かる定義

ストリップセール(Strip Sale、読み方:すとりっぷせーる)とは、1人の売り手(LP)が保有する複数ファンドの持分を、それぞれのNAVに対して一定の比率(プロラタ)で切り出し、ひとまとめにして単一の買い手に一括売却するセカンダリー取引の形態です。複数ファンド持分の一括売却、ダイバーシファイド・ストリップとも呼ばれ、LP主導セカンダリーの代表的なバリエーションの一つです。

なぜ実務で重要なのか

売却LP(年金基金・保険会社等)にとっては、保有する多数のGP関係先を1件ずつ個別に売却する手間を省き、単一の買い手・単一の交渉プロセスで効率的にポートフォリオを整理できる利点があります。買い手(セカンダリーファンド)にとっては、IRRとMOICを用いて、優良ファンドだけを狙い撃ちする「チェリーピッキング」を防ぐプロラタ設計により、売り手が公平な条件で取引に応じやすくなります。プレースメントエージェント・仲介業者は、複数ファンドのNAV評価とプライシングの取りまとめ役を担います。

仕組み:プロラタ設計とチェリーピッキング防止

ファンド保有NAVストリップ比率40%での切り出し額
Fund A2,0002,000 × 40% = 800
Fund B1,5001,500 × 40% = 600
Fund C1,0001,000 × 40% = 400
Fund D500500 × 40% = 200

この方式のポイントは、全ファンドに同一比率を適用することです。買い手が「優良なFund Aだけ買いたい」という選別(チェリーピッキング)を行おうとすると、売り手にとって不利な残存ポートフォリオ(質の低いファンドだけが残る)が生じるため、売り手はプロラタでの一括売却を条件とするのが一般的です。

整数設例で確認する

設例(架空数値・単位:百万円)。売り手LPが4つのファンド持分を保有し、40%のストリップを一括売却するケースです。

  • Fund A:NAV2,000 / Fund B:NAV1,500 / Fund C:NAV1,000 / Fund D:NAV500
  • 合計NAV:2,000 + 1,500 + 1,000 + 500 = 5,000
  • 40%ストリップの合計NAV:5,000 × 40% = 2,000(内訳:800/600/400/200)

買い手がブレンド価格としてNAVの85%を提示した場合、購入価格:2,000 × 85% = 1,700。ファンド別に検算すると、800×85%=680、600×85%=510、400×85%=340、200×85%=170で、合計680+510+340+170=1,700となり、ブレンド価格と一致することが確認できます。

ファンドキャッシュフローへの影響

売却LPにとっては、複数ファンドから将来にわたって不規則に発生するはずだった分配を、一度の取引で現金化できるため、資金計画・流動性管理が大幅に簡素化されます。買い手にとっては、複数の異なるビンテージ(ファンド・ビンテージ)・残存期間のキャッシュフローが1つのポートフォリオとして統合されるため、個々のファンドのJカーブの位置が異なる分、ブレンド全体としてはキャッシュフローの分散効果(平準化)が働きやすいという特徴があります。

実務での調べ方・確認手順

ストリップセールの評価では、次の手順でモデルを組みます。

  • 対象となる各ファンドのNAV・ビンテージ・残存投資期間を一覧化し、統一のストリップ比率を適用した切り出し額を算出する
  • 各ファンドの将来キャッシュフロー(分配・追加出資)予測を積み上げ、ポートフォリオ全体のブレンドIRR・MOICを試算する
  • 個々のファンドの質のばらつき(優良ファンドと劣後ファンドの混在度合い)が、買い手の提示するブレンド割引率にどう反映されているかを検証する

この用語をExcelで「組める」状態にする

複数ファンドのNAV・将来キャッシュフローを統合し、ストリップセールのブレンドIRR・割引率を検証できる状態にする。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「ストリップセールは1本のファンド売却と実質同じ」→ 正しくは、複数ファンドをプロラタでパッケージ化することで、買い手による選別(チェリーピッキング)を防ぐ設計です。単一ファンドの売却とは交渉の力学が異なります。

誤解2:「買い手は全ファンドに同一の評価をしている」→ 正しくは、切り出し比率こそ統一されますが、個々のファンドの残存期間・質の違いはブレンド価格の交渉過程で総合的に織り込まれています。比率の統一は「公平な参加」の担保であり、「同一評価」を意味しません。

日本実務での扱い

(2026年8月時点)国内の機関投資家は、海外オルタナティブ投資の見直し(デノミネーター効果への対応を含む)に伴い、保有する複数の海外ファンド持分をまとめて売却するストリップセールを活用する事例が増えつつあります。一方、国内の投資事業有限責任組合(LPS)持分については、組合契約上の譲渡制限条項が一般的に置かれており、譲渡には他の組合員の承諾等の手続きを要するため、国内案件でのストリップセール組成には海外ファンドに比べて実務上のハードルが残ります。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:LPが複数ファンドの持分をまとめて売却する際、プロラタ方式が採用される理由を説明してください。
「買い手による優良ファンドの選別(チェリーピッキング)を防ぐためです。全ファンドに同一の切り出し比率を適用することで、売り手は質の低いファンドだけが手元に残る事態を回避でき、買い手も公平な条件で参加できます。結果として、売り手は取引全体の実行可能性を高められます。」(30秒回答例)

深掘りでは「ストリップセールとステープルド・セカンダリーの違い」「ブレンド価格の中で個々のファンドの質をどう調整するか」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. ストリップセールとステープルド・セカンダリーはどう違いますか?
A. ストリップセールは複数の既存ファンド持分を比例配分で一括売却する取引で、新規コミットメントの条件は伴いません。ステープルド・セカンダリーは既存持分の売却に新ファンドへの新規コミットメントを組み合わせる取引で、GPの関与を前提とする点が異なります。

Q. ストリップ比率はどのように決まりますか?
A. 売り手が確保したい流動性の規模と、買い手が引き受けられる金額のバランスで決まるのが一般的です。売り手の資金ニーズに応じて20〜50%程度の比率が用いられることが多いですが、案件により異なります。

出典・参考(2026-08確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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