この記事で分かること

  • ランレート・プロフォーマEBITDAの定義と、LTM実績との違い
  • 期中の値上げ・コスト削減効果をどう年換算するか
  • 整数設例で見る、ランレート調整の具体的な計算
  • どこまでを合理的な調整として認めてよいかという実務判断

30秒で分かる定義

ランレート・プロフォーマEBITDA(Run-Rate / Pro Forma EBITDA、読み方:らんれーとぷろふぉーまいーびっとだ)とは、期中に実施した値上げ・コスト削減・買収の効果を通年ベースに年換算し、実力値のEBITDAを算出する調整です。LTM(直近12ヶ月)実績が過去の実際の数字であるのに対し、ランレートは「その施策が期初から通年で効いていたら」という仮定の数字である点が異なります。

なぜ実務で重要なのか

会社が期中に値上げを実施した場合、LTM実績にはその効果が一部の月しか反映されません。買い手・FASは、直近の実力水準を正しく評価するため、値上げ後の水準を通年ベースに引き直したランレートEBITDAを算出し、調整後EBITDAとしてバリュエーションの起点に使うかどうかを検討します。売り手にとっては評価額を押し上げる根拠になるため、積極的に主張される調整項目です。

仕組み:年換算の考え方

ランレート売上 = 施策実施後の直近実績(月次・四半期)× 12ヶ月(または4四半期)換算

単純に直近1ヶ月・1四半期を年換算するだけでなく、季節性の影響を除去するため、施策実施後の複数ヶ月分の平均を用いるのが望ましいとされます。買い手側は、売り手が提示するランレートが恣意的に良い時期だけを切り取っていないかを精査します。

整数設例で確認する

設例(架空数値・単位:百万円)。対象会社は年央(7月1日)に主要製品の価格を5%引き上げました。LTM売上1,000のうち、値上げ前の上半期(H1)が480、値上げ後の下半期(H2)が520です。

ランレート売上は、値上げ効果が通年反映された水準として、H2の実績を単純に年換算します。520×2=1,040です。LTM実績の1,000に対し、ランレート調整による上乗せは1,040−1,000=40、率にして4.0%(40÷1,000)です。粗利率を仮に一定の20%とすると、ランレートEBITDAは1,040×0.20=208となり、LTM EBITDAの1,000×0.20=200から8の上乗せになります。

案件プロセス上の位置付け

ランレート調整はQoE報告書の中で、EBITDAブリッジの一項目として扱われることが多く、他の非経常項目の調整とは性質が異なる点に注意が必要です。非経常項目の調整は「本来なかったはずの費用・収益を除く」作業ですが、ランレート調整は「まだ実現していない将来的な効果を先取りする」作業であるため、買い手側はより慎重に検証します。

財務モデル・Excelでの使い方

  • 月次売上分解シート:施策実施日を境に月次売上を分割し、実施後の月次平均×12で年換算します。
  • 季節性調整:業種特性で季節変動が大きい場合、直近数ヶ月ではなく前年同期比較を併用してランレートの妥当性を検証します。

この用語をExcelで「組める」状態にする

施策実施後の月次実績を年換算し、季節性を考慮したランレートEBITDAを算出できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

  • 誤解「ランレート調整はLTM実績と同じ確からしさを持つ」→正しくは、ランレートはあくまで仮定に基づく推計であり、LTM実績のような確定した事実ではありません。買い手側はこの違いを踏まえ、ランレート調整を全額バリュエーションに織り込むのではなく、一部割引いて評価することがあります。
  • 確認ポイント:①値上げ後の顧客離脱(解約)が織り込まれているか、②年換算の基礎とする期間が恣意的に選ばれていないか(好調な四半期だけを切り取っていないか)。

日本実務での扱い

(2026年7月時点)日本企業では、原材料価格の高騰を受けた価格転嫁の動きが近年広がっており、年央での値上げ実施後にランレート調整を求めるケースが増えています。日本の商慣習では価格改定の効果が顧客との個別交渉により段階的に浸透することが多く、値上げ発表日と実際の価格転嫁完了日にタイムラグが生じやすい点は、ランレート算定の前提として確認が必要です。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:ランレート調整とLTM実績はどう使い分けますか。
「LTM実績は確定した事実としてバリュエーションの土台になりますが、期中に構造的な変化(値上げ・コスト削減)があった場合、LTMだけでは直近の実力水準を過小評価します。ランレート調整でその変化を年換算し、実力に近い水準を推計しますが、あくまで推計である以上、買い手側は保守的に一部を割り引いて評価するのが一般的です。」

よくある質問(FAQ)

Q. ランレートとプロフォーマは同じ意味ですか?
A. 近い概念ですが、ランレートは主に「直近の水準を年換算する」調整を指し、プロフォーマは値上げ・コスト削減に加え、期中に実施したM&A(買収・売却)の影響を仮定として反映する、より広い調整を指すことが多くなっています。

Q. ランレート調整はどの程度まで一般的に受け入れられますか?
A. 値上げやコスト削減のように実施日・効果が明確なものは受け入れられやすい一方、将来の売上成長を前提とした調整は投機的とみなされ、通常は認められません。

出典・参考(2026-07-21確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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