この記事で分かること

  • Google Sheetsでの財務モデリング=Excelの代わりにクラウド上で財務モデルを構築する手法であること
  • 共同編集・クラウド保存の強みと、関数・パフォーマンス面での制約
  • 整数設例で見る、ExcelとGoogle Sheetsで結果が異なり得る関数の違い
  • VC投資先・スタートアップでの採用実態とIB/PE実務での位置づけ

30秒で分かる定義

Google Sheetsでの財務モデリングとは、デスクトップ版のExcelの代わりに、ブラウザ上で動くGoogle Sheetsを使って財務モデルを構築する手法のことです。英語では Financial Modeling in Google Sheets(読み方:グーグルシーツでのざいむもでりんぐ)、スプレッドシートモデリング・クラウド共同編集モデルとも呼ばれます。財務モデリングの基本思想(前提・計算・出力の三層構造、3表連動の考え方)はExcelと共通していますが、複数人が同時に同じファイルを編集できるリアルタイム共同編集と、常にクラウド上に保存されバージョン管理が自動化される点が最大の違いです。

なぜ実務で重要なのか

スタートアップやVC投資先企業では、Google Workspaceを標準の業務基盤として採用している会社が多く、資金調達用の財務モデルや月次のKPIダッシュボードをGoogle Sheetsで作成・共有する実務が一般的です。投資家(VC)がポートフォリオ企業の月次実績を確認する際、Google Sheetsで作られたモデルにコメント機能で直接フィードバックを残せる利便性が評価されています。一方、伝統的なIB・PEの案件では、大規模なLBOモデルや3表連動モデルは依然としてExcelが標準です。理由は後述する計算負荷とVBA・アドインの利用可否にあり、「どちらが優れているか」ではなく「案件の性質に応じてどちらを使うか」という判断が実務上の論点になります。

計算式(または仕組み)

ExcelとGoogle Sheetsの実務上の違いを整理します。

観点ExcelGoogle Sheets
共同編集共同作業ブック機能はあるが制約が多いリアルタイム同時編集が標準機能
バージョン管理ファイル名での手動管理が中心変更履歴が自動保存され、任意時点に復元可能
計算負荷大規模モデルでも比較的高速大規模・複雑な数式で処理が重くなりやすい
マクロ・アドインVBAマクロ、専用アドインが豊富Google Apps Script(JavaScript系)が中心
データテーブル機能What-If分析(データテーブル)が標準搭載同等機能はアドインや代替関数での実装が必要

整数設例で確認する

設例(架空数値)。単位は百万円。あるモデルで、条件付き合計に=SUMIFS(D5:D16, C5:C16, ">100")という数式を使い、100を超える月次売上(120, 150, 180の3か月)を合計するケースを考えます。

合計 = 120 + 150 + 180 = 450。この数式自体はExcel・Google Sheetsのどちらでも同じ構文で動作し、結果も同じ450になります。SUMIFS・XLOOKUP・INDEX/MATCHなど主要な関数はほぼ共通しているため、基本的な3表連動モデルであれば、数式レベルの互換性は高いのが実情です。

一方で注意が必要な違いもあります。日付・時刻のシリアル値の扱いや、配列数式の書き方(Google SheetsのARRAYFORMULA関数)、条件付き書式の一部の詳細設定、印刷レイアウトの再現性などは完全に一致しません。またVBAマクロで自動化されたExcelモデルをGoogle Sheetsにそのまま移行することはできず、Google Apps Scriptでの書き直しが必要になります。「同じ答えが出るはず」と過信せず、移行時は主要な計算結果を突き合わせて検証することが実務上重要です。

案件プロセス上の位置付け

Google Sheetsでのモデリングは、スタートアップの資金調達プロセスにおいて、初期のシード〜シリーズA段階の財務モデル作成・共有でよく使われます。VCとの月次レポーティング、投資検討時のデータルームでの共有において、リアルタイムでコメントをやり取りできる利点が活きます。一方、案件がより大規模化しバイアウトの検討段階に入ると、詳細なLBOモデルの構築にはExcelが選ばれることが多く、案件の初期段階はGoogle Sheets、精緻なモデル構築フェーズではExcelという使い分けが実務上の1つのパターンです。

財務モデル・Excelでの使い方

  • ExcelファイルをGoogle Sheetsへ変換する際は、VBAマクロ・一部の高度な関数・条件付き書式のルールが失われる可能性があるため、変換後に必ず主要な計算結果を検証する
  • 複数人での共同編集を前提とする場合、モデルのバージョン管理の考え方をGoogle Sheetsの変更履歴機能で代替できるが、誰がいつ何を変更したかを追える設定(名前付きバージョンの保存)を活用する
  • データテーブルを使った感応度分析は、Google Sheetsでは標準機能がないため、複数のシナリオを別列に並べて手動計算するか、拡張機能を利用する
  • Google Apps Scriptで自動化を組む場合、Excelマクロの記述(VBA)とは文法が異なるため、既存のVBAロジックをそのまま移植することはできない

この用語をExcelで「組める」状態にする

主要関数の互換性と制約を理解した上で、Excelモデルの構造をGoogle Sheetsへ移行・検証できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「Google SheetsはExcelの完全な代替品」→ 主要関数は共通していますが、VBAマクロ・データテーブル・一部の高度な機能には代替が必要で、完全互換ではありません。

誤解2:「大規模モデルもGoogle Sheetsで問題なく動く」→ セル数・数式の複雑さが増すと、Google Sheetsは再計算速度がExcelより遅くなる傾向があり、数千行規模のLBOモデルでは体感的な差が出ることがあります。

誤解3:「共同編集機能があれば、ファイルの整理は不要」→ 複数人が同時に編集できる分、意図しない上書きや構造の破壊が起きやすく、むしろバージョン管理の規律がより重要になります。

確認ポイント:投資家や取引先とGoogle Sheetsでモデルを共有する際は、編集権限(閲覧のみ・コメント可・編集可)を目的に応じて適切に設定します。

日本実務での扱い

日本のスタートアップ・VC業界では、Google WorkspaceとNotion・Slackなどのクラウドツールを組み合わせた業務運用が広がっており、資金調達用の財務モデルをGoogle Sheetsで作成する企業が増えています。一方、伝統的な日系金融機関・国内PEファンドでは、社内システムのセキュリティポリシー上、クラウド型のスプレッドシートサービスへ機密情報を含む財務モデルを保存すること自体が制限されている場合があり、この点はExcelとの使い分けを左右する実務上の制約になっています。個人情報保護委員会や各社の情報セキュリティ規程に基づき、クラウドサービスへの機密データのアップロード可否を事前に確認する必要があります(2026年7月時点)。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:VC投資先のスタートアップとの財務モデルのやり取りに、Excelではなく Google Sheets が指定されました。どう対応しますか?
「まず既存のExcelモデルの構造(三層構造、数式パターン)をそのままGoogle Sheetsへ移行できるか確認します。VBAマクロやデータテーブルなど互換性のない機能があれば、代替の実装方法(Google Apps Script、複数シナリオの手動並列化)を検討します。移行後は主要な計算結果を元のExcelモデルと突き合わせ、差異がないことを確認してから共有します。」

深掘りでは「Excelでしかできないことは何か」「共同編集時のバージョン管理の考え方」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. Google SheetsとExcelのどちらを学ぶべきですか?
A. 投資銀行・PEファンドを志望するなら、業界標準であるExcelの習熟が優先されます。VC・スタートアップ関連のキャリアを志望する場合は、Google Sheetsでの実務にも慣れておくと役立ちます。基本的な関数・数式の考え方は共通しているため、一方を習得すればもう一方への応用は比較的容易です。

Q. Google Sheetsで作ったモデルをExcelに戻すことはできますか?
A. ファイル形式の変換(Excel形式でのダウンロード)自体は可能ですが、Google Apps Scriptで組んだ自動化機能はExcelでは動作しません。数式・データ部分は概ね引き継がれますが、変換後の動作確認は必須です。

出典・参考(2026-07-25確認)

  • 経済産業省(スタートアップの業務基盤・クラウド活用に関する公表資料) https://www.meti.go.jp/
  • 個人情報保護委員会(クラウドサービス利用時の安全管理措置に関するガイドライン) https://www.ppc.go.jp/

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。