この記事で分かること

  • エクスキューズ権とエクスクルード権の違いと、それぞれの発動要件
  • 特定LPが不参加になった場合、他のLPの負担がどう変わるか(整数設例)
  • GP側が実務上どう対応するか
  • 日本のLPがこの権利を求める典型的な場面

30秒で分かる定義

LPエクスキューズ・エクスクルード条項(LP Excuse and Exclude Rights)とは、特定の投資先案件について、宗教上・規制上・利益相反等の理由で、個別のLPがその案件への出資参加を除外できることを定めるLPA上の権利のことです。エクスキューズ(Excuse)はLP自身の申告により不参加が認められるケース(例:宗教上の理由でギャンブル関連事業への投資に参加できない)を指し、エクスクルード(Exclude)はGP側の判断・法規制により当該LPを特定案件から除外するケース(例:規制上の理由でそのLPを関与させられない)を指すのが一般的な区別です。

なぜ実務で重要なのか

LP(特に政府系ファンド・宗教法人・規制業種の金融機関)は、募集段階でこの条項の有無を必ず確認し、自らの内部方針・規制上の制約と投資対象が抵触する可能性がある場合に備えます。GPにとっては、条項自体はLPからの信頼確保に資する一方、発動されるたびに残りのLPで案件資金を賤う調整が必要になり、ファンド構造上の管理コストが発生します。新規案件を投資委員会にかける段階で、対象業種にエクスキューズ該当LPがいないかをあらかじめ確認しておくのが実務上のベストプラクティスです。ファンド組成の法務担当は、条項の発動プロセス(申告の時期、証明の要否)をLPAに明確に定めておく必要があります。

仕組み:発動時の資金負担の調整

特定LPがエクスキューズ・エクスクルードされた場合、当該案件への投資額は、①除外されたLP分を除いた投資額に縮小する、②他のLPが比例按分で追加負担する、③GPがあらかじめ用意した共同投資枠(コインベストメント)で稴埋めする、のいずれかの方法で調整されます。実務では①(案件規模の縮小)が最もシンプルですが、案件の性質上当初想定した投資額を確保する必要がある場合は②③が使われます。

整数設例で確認する

設例(架空数値・単位:百万円)。コミットメント総額10,000のファンドで、LP甲のコミット比率が8%(800)だとします。ある投資先案件の投資額が1,500と算定されたとします。

LP甲の通常の負担分 = 1,500 × 8% = 120
LP甲がエクスキューズされた場合の投資額 = 1,500 − 120 = 1,380

検算:1,500×0.08=120、1,500−120=1,380。LP甲がこの案件に不参加となる代わりに、ファンド全体の当該案件への投資額を1,380に縮小して実行する(案件規模の縮小で対応する)のが最もシンプルな処理です。LP甲は、この投資先が将来生む分配金にも一切あずかりませんが、その分の管理報酵・キャリーの計算対象からも外れます。

契約条項への影響

エクスキューズ・エクスクルードは、投資制限条項とは異なり「ファンド全体の投資行動を制約する」ものではなく、「特定のLP個人の参加可否」を左右する条項です。この権利をどのLPに、どの範囲で認めるかは、募集時のサイドレター交渉で個別に取り決められることが多く、標準的なLPA本体には一般的な発動要件のみを定め、具体的な適用範囲は個別LPとのサイドレターで補完する、という二層構造が典型的です。

財務モデル・Excelでの使い方

ファンド管理台帳では、LPごとにエクスキューズ対象業種・エクスクルード事由のフラグを持たせ、新規案件の投資額を確定する際に、該当LPの負担分を自動的に控除できる計算式を組みます。案件規模の縮小で対応する場合は、投資額そのものが変動するため、ポートフォリオ全体のキャピタルコールスケジュールにも影響が及ぶ点をモデル上で追跡できるようにしておきます。

この用語をExcelで「組める」状態にする

LPごとの除外フラグを持たせ、案件ごとの投資額とキャピタルコール額を自動調整できる台帳を設計する。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解「エクスキューズ権を持つLPはいつでも自由に出資を拒否できる」→ 正しくは、発動には正当な理由(宗教上の制約、内部方針との抵触等)の申告・証明が必要とされるのが通常で、単なる「その案件が気に入らない」という理由での発動は認められません。

確認ポイント:①発動要件(申告のタイミング、証明書類の要否)、②除外された場合の資金稴埋め方法、③エクスキューズが頻発した場合のGP側の対応方針(LPとの関係見直し)、の3点はLPA・サイドレター交渉での実務論点です。

日本実務での扱い

(2026年7月時点)日本のLPでは、政府系金融機関や特定の業界団体が出資母体となるファンドで、内部規程上投資できない業種(ギャンブル、たばこ関連等)を理由にエクスキューズ権を求める例が見られます。国内の適格機関投資家等特例業務として組成される中小規模ファンドではLP数自体が少なく、条項が形式的にとどまることもありますが、機関投資家中心のファンドでは、募集時のLPAC設計と合わせて実務上重要な交渉項目になります。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:エクスキューズ権とエクスクルード権の違いを説明してください。
「エクスキューズは、LP自身が宗教上・内部方針上の理由から特定案件への不参加を申し出る権利です。エクスクルードは、規制上の制約など、GP側の判断で特定LPをその案件から除外する権利です。いずれも発動されると、当該LPはその案件の投資額負担・分配金・報酵計算の対象から外れ、GPは案件規模の縮小か他のLPでの稴埋めで対応します。」

深掘りでは「特定LPのエクスキューズが頻発した場合のファンド運営への影響」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. すべてのLPがエクスキューズ・エクスクルード権を持ちますか?
A. 標準的なLPAには一般的な発動要件が定められますが、実際にどのLPがどの範囲でこの権利を行使できるかは、個別のサイドレター交渉で決まることが多く、全LPが同じ条件を持つとは限りません。

Q. エクスキューズされたLPは管理報酵を払わなくてよいのですか?
A. 通常、除外された案件に対応する分の管理報酵・費用負担は免除されるのが一般的ですが、ファンド全体の固定費(アドミニストレーション費用等)まで免除されるかはLPAの規定によります。

出典・参考(2026-07-25確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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