この記事で分かること

  • ユニトランシェ1本の中で弁済順位を分けるFLLO構造の仕組み
  • 借入人が当事者にならない貸し手間契約(AAL)という特徴
  • ブレンド6.0%をFO4.5%とLO7.0%に分解する金利按分の整数設例
  • 担保処分価値350のときFOが100%、LOが50%になる回収の整数設例

30秒で分かる定義

ファースト・アウト/ラスト・アウト構造(First-Out / Last-Out、略称FLLO、読み方:ふぁーすとあうと・らすとあうとこうぞう)とは、形式的には1本のシニア担保付ローン(ユニトランシェ)でありながら、貸し手の間だけで弁済の優先順位を「先に回収するファーストアウト」と「最後に回収するラストアウト」に分け、金利とリスクを再配分する仕組みです。借入人から見れば契約は1本で、支払う総額の利息も1つですが、貸し手の内部では低リスク・低利回りの部分と高リスク・高利回りの部分に分かれています。この順位分けは、借入人が当事者とならない貸し手間契約(AAL:Agreement Among Lenders)で定められるのが特徴です。

なぜ実務で重要なのか

PEファンドのディールチームにとっては、シニアとメザニンを別契約で組成するより手続が簡素で、実行確度とスピードが上がるという利点があります。借入人は1つの契約書・1つの担保パッケージ・1つの返済スケジュールを管理すればよく、貸し手間の順位争いに巻き込まれにくくなります。プライベートクレジット・ファンドは、リスク許容度に応じてFOとLOを配分することで、銀行との協働や自社ファンドのリターン目標との整合を図ります。銀行は、ユニトランシェ全体には出したくないがFO部分なら参加できる、という形で案件に関与できます。プライベートクレジット市場の拡大を背景に広がった仕組みです。

仕組み(AALによる内部順位分け)

FLLOの要点は、外形と内部の二層構造にあります。

  • 外形(クレジット・アグリーメント):借入人と貸し手団の間の契約は1本のシニア担保付タームローン。担保は全資産に設定され、コベナンツ・期限の利益喪失事由も一本化されています。借入人は加重平均された単一の金利を支払います。
  • 内部(AAL):貸し手同士が、受け取った元利金をどの順序で分配するかを取り決めます。平常時は各自の持分に応じて按分されますが、期限の利益喪失やデフォルトなど一定の事由(トリガーイベント)が生じると、ファーストアウトの元本・利息が全額回収されるまでラストアウトには配分されない、という優先順位に切り替わります。

整数設例で確認する

設例(架空数値・単位:百万円)。ユニトランシェ500を、ファーストアウト(FO)200とラストアウト(LO)300に分けます。借入人が支払う金利は年6.0%の1本です。

① 金利の按分。FOに4.5%、LOに7.0%を配分すると仮定します。

  • FOの利息 = 200 × 4.5% = 9.0
  • LOの利息 = 300 × 7.0% = 21.0
  • 合計 = 9.0 + 21.0 = 30.0 → 加重平均利回り = 30.0 ÷ 500 = 6.0%

検算:借入人が支払う総額30.0は、ユニトランシェ500に6.0%を掛けた金額と一致します。借入人のコストは変わらないまま、貸し手の内部で低利回り・低リスクの200と高利回り・高リスクの300に分かれているのがFLLOの経済的な本質です。

② デフォルト時の回収。担保処分による回収額が350にとどまった場合を考えます。AALのウォーターフォールにより、FOが先に全額回収されます。

  • FOへの配分 = 200(回収率 200 ÷ 200 = 100%
  • LOへの配分 = 350 − 200 = 150(回収率 150 ÷ 300 = 50%

検算:200 + 150 = 350 で回収額と一致します。比較として、FLLOの分割がなく貸し手全員がパリパス(同順位)であれば、回収率は一律 350 ÷ 500 = 70%です。FOは70%から100%へ改善し、LOは70%から50%へ悪化します。この30ポイントの改善と20ポイントの悪化の対価が、金利の1.5ポイント引下げ(6.0%→4.5%)と1.0ポイント引上げ(6.0%→7.0%)として表れている、という読み方をします。

リスク配分への影響

FLLOは、リスクを消すのではなく貸し手の間で移転させる仕組みです。したがって、案件全体のレバレッジや事業リスクが変わるわけではありません。実務上の含意は次のとおりです(案件全体の調達余力の考え方はDebt CapacityとLBOファイナンスを参照)。

  • コントロールの所在が変わる:デフォルト後にどの貸し手が実行手続や再建方針を主導するかは、AALの議決権条項で決まります。FOが多数決で担保実行を選び、LOは事業継続を望む、といった利害対立が起こり得ます。
  • 担保パッケージの一体性が前提:FLLOは1つの担保・保証パッケージを共有する構造なので、担保の有効性・対抗要件の具備が全ての貸し手に共通の前提になります。

財務モデル・Excelでの使い方

  • デットスケジュールは1本+内訳2本で組む:借入人側のキャッシュフローは合算のユニトランシェ1本で計算し、その下にFO・LOの元本残高と利息を内訳として持ちます。加重平均利回りが借入人の支払金利と一致するチェック行を必ず置きます。
  • 回収シミュレーションを別表で作る:企業価値(またはEV/EBITDA倍率)を横軸に、担保処分価値からFO・LOへの配分と回収率を算出する表を作ります。FO = MIN(回収額, FO元本)、LO = MIN(MAX(回収額 − FO元本, 0), LO元本) という2式で組めます。

この用語をExcelで「組める」状態にする

ユニトランシェを内訳トランシェに分解し、回収シミュレーションから貸し手別IRRまで出せるようにする。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「FLLOはシニアとメザニンの言い換え」→ 正しくは、契約構造が異なります。メザニンは借入人との間で別契約・別担保順位(または無担保)として組成されますが、FLLOは1本の担保付契約の内部を貸し手間の合意で分けたものです。

誤解2:「ファーストアウトなら損失を被らない」→ 正しくは、担保価値がFO元本を下回れば損失が出ます。順位が上であることと元本保全は別の話です。

日本実務での扱い

(2026年8月時点)FLLOは、米欧のプライベートクレジット市場でユニトランシェが普及する過程で発達した仕組みであり、日本の国内LBO市場ではまだ一般的とはいえません。日本では、シニアローンを銀行団が、劣後部分を優先株や劣後ローンの形でメザニン投資家が引き受け、両者の関係を債権者間協定(インタークレジター契約)で規律する構成が主流です。この場合、順位関係は借入人も含む契約群で明示され、貸し手内部のみの合意で完結するFLLOとは前提が異なります。

もっとも、国内でも独立系・海外系のプライベートクレジット・ファンドの参入が進んでおり、銀行とファンドが1つのファシリティに共同で参加する形態は増加傾向にあります。日本法の下でFLLOを組成する場合、担保の共有(信託や担保権者代理人の活用)、貸し手間の分配合意の倒産手続における取扱い、債権譲渡の対抗要件といった論点を法律事務所と詰める必要があります。また、貸し手が金融商品取引業者や銀行である場合、それぞれの業規制・自己資本規制上の取扱いも確認事項になります。国内のダイレクトレンディングの組成についてはダイレクトレンディングファンドの組成を参照してください。融資条件全般の交渉はレンダー交渉とタームシートの読み方で扱っています。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:ユニトランシェの中でFLLOはどう機能しますか。
「借入人との契約は担保付のシニアローン1本のままで、貸し手同士が結ぶ貸し手間契約により、回収の優先順位をファーストアウトとラストアウトに分けます。借入人は加重平均された単一の金利を支払い、その利息を貸し手間で低リスク・低利回りのFOと高リスク・高利回りのLOに配分します。デフォルト時はFOが先に全額回収され、残りがLOに回るため、担保処分価値が元本を下回る局面で回収率が大きく分かれます。借入人からは1本に見えるがリスクは内部で階層化されている、という点が要点です。」

よくある質問(FAQ)

Q. 借入人はFOとLOの比率を知ることができますか。
A. AALの当事者ではないため、必ずしも開示されません。ただし、貸し手構成やアレンジャーとの関係から実態が把握できる場合もあり、実務ではワークアウトの可能性を見据えて確認を試みます。

Q. FLLOがあると調達コストは下がりますか。
A. 直接下がるとは限りませんが、リスク許容度の異なる貸し手を同一ファシリティに呼び込めるため、案件全体として調達しやすくなる効果があります。低リスク部分に銀行が参加できれば、全額をプライベートクレジットで賄う場合より加重平均コストが下がる可能性はあります。

出典・参考(2026-08確認)

  • 日本銀行(金融システムレポート、非銀行部門の与信に関する分析) https://www.boj.or.jp/
  • BIS(プライベートクレジット市場およびレバレッジド・ファイナンスに関する分析資料) https://www.bis.org/
  • IOSCO(レバレッジド・ローンおよびプライベートファイナンスに関する報告) https://www.iosco.org/

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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