この記事で分かること

  • CMGR(月次複利成長率)の定義と、CAGRとの関係
  • 正しい計算式(幾何平均)と、単純平均で計算した場合との誤差
  • 整数設例による計算と、指数計算の検算方法
  • VCのデューデリジェンス・Pitch DeckでCMGRがどう使われるか

30秒で分かる定義

CMGR(月次複利成長率、Compound Monthly Growth Rate、読み方:シーエムジーアール)とは、月次の売上・ユーザー数等の成長率を、複利(幾何平均)ベースで測った指標です。年単位の成長率を複利ベースで測るCAGRの月次版にあたり、立ち上がり期のSaaS・スタートアップのように月次で急成長する事業の伸びを評価する際に使われます。日本語では「月次成長率(複利ベース)」と説明されます。

なぜ実務で重要なのか

VCのデューデリジェンスでは、投資検討先のPitch Deckに記載された成長率が、複利ベース(CMGR)で算出されたものか、単純平均で算出されたものかを見極める作業が発生します。両者は数値が大きく異なることがあるためです。スタートアップの資金調達資料でも、月次のトラクション(実績の伸び)を投資家に示す際の代表的な指標として使われます。グロースエクイティの実務でも、年単位のCAGRでは捉えきれない、立ち上がり期の急成長フェーズの評価にCMGRが用いられます。成長率と収益性を併せて評価するRule of 40の議論でも、前提となる成長率をどう算出しているかが論点になります。

計算式(または仕組み)

CMGR =(期末値 ÷ 期初値)^(1 ÷ n)- 1  (n=経過月数)

累積の成長倍率(期末値÷期初値)を、経過月数nで累乗根を取ることで「毎月一定の複利で伸びたと仮定した場合の月次成長率」を逆算する考え方です。単純に「累積成長率をnで割る」算術平均のアプローチとは異なり、複利の効果(成長した後の水準にさらに成長率が乗る効果)を織り込むため、算術平均よりも小さい値になるのが特徴です。

整数設例で確認する

設例(架空数値・単位:百万円)。あるSaaSスタートアップのMRRが、1月末の100から、12か月後の13月末(1年後)に200まで、ちょうど倍増したとします(n=12)。

CMGR =(200 ÷ 100)^(1 ÷ 12)- 1 = 2^(1/12)- 1 ≈ 5.95%です。検算:自然対数を使うと、ln2=0.6931、0.6931÷12=0.05776、e^0.05776≈1.05945なのでCMGR≈5.95%(1.05945-1)。逆算すると、100×1.0595の12乗≈200.1となり、ほぼ200に一致します(丸め誤差の範囲)。

ここで、もし「累積成長率100%を単純に12か月で割る」という誤った計算をすると、100%÷12=8.33%という値が出ます。実際のCMGR(5.95%)より2.38ポイントも高く出ており、単純平均は複利の効果を無視するため成長率を過大評価する誤りだと分かります。この誤差は成長期間が長くなるほど、また成長倍率が大きくなるほど拡大します。

投資判断への影響

VCがスタートアップの資金調達資料に記載された成長率を評価する際、CMGRと単純平均のどちらで計算されているかを確認しないと、投資判断の前提となる成長ペースを実態より高く見積もってしまいかねません。S4の設例のとおり、単純平均は複利効果を無視するぶん常に実際のCMGRより高めの数値が出るため、資料上の「月次成長率○%」という表記を鵜呑みにせず、期初値・期末値・経過月数から自ら検算する姿勢がデューデリジェンスでは求められます。

財務モデル・Excelでの使い方

  • Excelでは=(期末値/期初値)^(1/経過月数)-1という累乗の式でCMGRを直接計算できる。POWER関数(=POWER(期末値/期初値,1/経過月数)-1)でも同じ結果になる
  • 将来予測シートでは、算出したCMGRを前提に「翌月MRR=前月MRR×(1+CMGR)」という複利の式を月次で展開し、将来のMRR推移を試算する
  • 算出期間を直近1〜2か月だけにすると季節性や一時的な要因の影響を受けやすいため、最低6か月以上のデータで算出するのが望ましい

この用語をExcelで「組める」状態にする

累乗計算でCMGRを算出し、複利前提の将来MRR予測まで組めるモデルを設計できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「累積成長率を経過月数で割ればCMGRになる」→ 正しくは、幾何平均(累乗根)で計算する必要があります。S4の設例のとおり、単純平均は複利効果を無視するため、実際のCMGRより高い数値が出て成長ペースを過大評価します。

誤解2:「直近1〜2か月の伸びだけで算出してよい」→ 正しくは、季節性や一時的な要因の影響を避けるため、最低6か月以上の期間で算出するのが望ましいです。短期間の数値は特定の大口契約やキャンペーンの影響で跳ねやすく、実態のトレンドを反映しない場合があります。

日本実務での扱い

日本のSaaSスタートアップの資金調達資料(Pitch Deck)でも、CMGR・CAGRは国際標準の指標として広く使われています。経済産業省はスタートアップの成長実態の把握・政策立案のための統計整備を進めており(2026年8月時点)、VCの投資検討においても、業界内のベンチマーク水準と比較する形でCMGRが参照されることが一般的です。日本語の資料では「月次成長率」とだけ記載され、算出方法(複利ベースか単純平均か)が明記されないケースもあるため、実務では算出根拠を確認する慎重さが求められます。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:CMGRとCAGRの違いを説明してください。
「どちらも複利(幾何平均)ベースで成長率を測る点は共通ですが、CAGRが年次データを対象にするのに対し、CMGRは月次データを対象にする点が違います。計算式は(期末値÷期初値)の(1÷経過期間数)乗マイナス1で共通の考え方です。急成長期のスタートアップは年単位では変化が粗すぎるため、月次のCMGRでより高い解像度でトラクションを評価します。」(30秒回答例)

深掘りでは「単純平均との誤差がなぜ生じるか」「算出期間を何か月に設定すべきか」が定番です。

よくある質問(FAQ)

Q. CMGRを年率換算するとCAGRと一致しますか?
A. 理論上は、CMGRを(1+CMGR)の12乗-1で年率換算した値が、同じ期間のCAGRとほぼ一致します。ただし実際のデータでは月ごとの成長率が一定ではないため、厳密な換算というより近似的な目安として扱うのが実務的です。

Q. MRRが減少した月がある場合もCMGRは計算できますか?
A. 期初値と期末値がいずれもプラスであれば計算自体は可能ですが、途中の月に大きな増減があると、CMGRは期初・期末の2点だけを均した値になり、途中の変動(チャーンの急増等)を反映しません。月次の推移グラフと併せて確認するのが望ましいです。

出典・参考(2026年8月確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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