この記事で分かること
- 借入金の定義と、短期借入金・長期借入金・1年内返済予定の長期借入金の区分
- 当座借越・コミットメントラインなど、BS上の表示と範囲の注意点
- 長期借入金から1年内返済予定分を振り替える手順と有利子負債の合計を整数設例で検算
- 財務モデルのデットスケジュールでの組み方と、日本実務での確認ポイント
30秒で分かる定義
借入金(かりいれきん、Short-Term and Long-Term Borrowings)とは、金融機関などから借り入れた資金で、返済期日が貸借対照表日(決算日)の翌日から1年以内のものを短期借入金、1年を超えるものを長期借入金として区分する勘定科目です。財務諸表等規則は、短期借入金(金融手形および当座借越を含む)を流動負債、長期借入金(金融手形を含む)を固定負債の区分表示項目として定めています[1]。借入金は通常は利息を伴う負債であり、有利子負債の中心項目です(役員・関係会社からの無利息の借入金も借入金に含まれるため、有利子負債への集計は定義を確認します)。
有利子負債全体(社債・リース負債などを含む範囲)は有利子負債で扱います。本ページは、借入金の1年基準による区分、1年内返済予定分の振替、当座借越・コミットメントラインの表示を整理します。
なぜ実務で重要なのか
融資担当・クレジットは、借入金の期日構成(期日別の返済額)から、返済能力とリファイナンスリスクを見ます。期日が集中する時期(マチュリティ・ウォール)の分析はリファイナンス分析とMaturity Wallが詳しく扱っています。IB・PE・FASは、バリュエーションでEV(企業価値)から株主価値を求めるときのネットデットに借入金を含め、LBOモデルでは借入金の返済スケジュールを組みます。経営企画・経理は、資金繰りと、決算時の短期・長期の区分を管理します。短期借入金と長期借入金の違いは、流動比率(流動資産÷流動負債)にも影響するため、財務分析でも重要です。
計算式(ま たは仕組み)
借入金は、借入時に増え、返済時に減ります。仕訳は次のとおりです。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 銀行から借入れた | 現金預金 | 短期借入金(または長期借入金) |
| 元本を返済した | 短期借入金(または長期借入金) | 現金預金 |
| 利息を支払った | 支払利息(営業外費用) | 現金預金 |
| 決算日に長期借入金のうち1年内に返済予定の分を振り替える | 長期借入金 | 1年内返済予定の長期借入金(流動負債) |
1年基準による区分は、財務諸表等規則が定める流動負債と固定負債の範囲によります。「その他の負債で一年内に支払又は返済されると認められるもの」は流動負債に属し[1]、固定負債には、社債、長期借入金、関係会社からの長期借入金、繰延税金負債などのうち流動負債に属しないものが含まれます[1]。長期借入金のうち、決算日後1年以内に返済期日が到来する部分は、流動負債として区分して表示するのが一般的です(振替後の科目名は会社により異なります)。
| 科目 | 区分 | 主な内容・注意点 |
|---|---|---|
| 短期借入金 | 流動負債 | 金融手形および当座借越を含む。株主・役員・従業員からの短期借入金は別の科目で区分[1] |
| 1年内返済予定の長期借入金 | 流動負債(実務上の科目) | 長期借入金のうち決算日後1年以内に返済予定の分。詳しくは1年内返済予定の長期借入金 |
| 長期借入金 | 固定負債 | 金融手形を含む。株主・役員・従業員・関係会社からの長期借入金は別に区分[1] |
| 関係会社長期借入金 | 固定負債 | 関係会社からの長期借入金[1] |
整数設例で確認する
設例(架空数値)。単位は百万円。決算日現在、次のとおりとします。
- 運転資金の借入800と当座借越200 → 短期借入金 = 800 + 200 = 1,000
- 長期借入金(総額)5,000。毎期末に1,000ずつ均等返済 → 決算日後1年以内の返済予定額 = 1,000
- BS上の区分:1年内返済予定の長期借入金 = 1,000(流動負債)、長期借入金 = 5,000 − 1,000 = 4,000(固定負債)
- 借入金合計 = 1,000 + 1,000 + 4,000 = 6,000
翌期末は、長期借入金の総額が 5,000 − 1,000 = 4,000 となり、そのうち1年内返済予定が1,000、残りの長期借入金は 4,000 − 1,000 = 3,000 です。毎期末に、固定負債から流動負債へ1,000を振り替えている点に注意します。
利息の簡易計算:固定金利1.2%を仮定します。翌期は期末に1,000を返済するまで5,000が残るため、長期借入金の支払利息 = 5,000 × 1.2% = 60 です。期中に均等に返済する前提に変えると、平均残高 (5,000 + 4,000) ÷ 2 = 4,500 × 1.2% = 54 になります。返済の時点の前提で利息が変わる点に注意します(実際は返済日と金利の改定を反映して日割り等で計算します)。
PL・BS・CFへの影響
BS:借入金は流動負債・固定負債に区分して表示され、1年基準で長期から短期へ振り替わります。短期の区分が増えると、流動比率は低下します。
PL:利息は営業外費用の支払利息に表示されます。
CF:借入れによる収入と返済による支出は、財務活動によるキャッシュ・フローに表示されます。利息及び配当金の区分は、企業会計審議会の作成基準により、受取利息・受取配当金・支払利息を営業活動の区分(支払配当金は財務活動)に記載する方法と、受取利息・受取配当金を投資活動、支払利息・支払配当金を財務活動の区分に記載する方法の2つから選び、選んだ方法は毎期継続して適用します[2]。支払利息だけを単独で選ぶものではありません。モデルでは、どちらの方法を選んだかを前提に明記します。
設例では、返済1,000は財務CFのマイナス(−1,000)、支払利息60は選んだ方法の区分に含めます。
財務モデル・Excelでの使い方
- デットスケジュール:借入金ごとに、期首残高、新規借入、約定返済、期末残高、金利、支払利息の行を持ちます。構造はデットスケジュールが参考になります。
- 1年内返済予定の振替:
=MIN(期末残高, 翌期の約定返済額)を流動負債の行に置き、長期借入金は=期末残高 − 1年内返済予定。振替で合計が変わらないことをチェック行で確認します。 - 利息の計算:平均残高×金利は
=AVERAGE(期首残高, 期末残高) × 金利。期中の借入・返済のタイミングが大きい場合は、期首残高ベースや日割りに変えます(循環参照に注意)。 - 有利子負債の集計:借入金に、社債・リース負債を加えるかを前提に明記します。ネットデットはネットデットを参照してください。
- 期日分析:決算日後の返済予定額(1年以内、1年超2年以内…)を別シートで管理し、期日集中をグラフで確認します。
この用語をExcelで
借入金の返済スケジュールから、1年内返済予定の振替・支払利息・有利子負債を連動させるデットスケジュールを組めるようになる。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「借入金は決算日にすべて長期か短期のどちらかに固定される」→ 長期借入金のうち決算日後1年以内に返済期日が到来する分は、流動負債に区分して表示します。設例では5,000のうち1,000が流動負債です。
誤解2:「当座借越は借入金ではない」→ 財務諸表等規則は、短期借入金に金融手形および当座借越を含めると定めています[1]。
誤解3:「コミットメントラインは借りた分だけでなく、枠全体が借入金」→ 借入金としてBSに載るのは、実行して借りた分です。未使用枠はBSに載りませんが、契約内容(手数料、財務制限条項)を確認します。
確認ポイント:1年内返済予定分の振替、借入先(関係会社・役員からの借入の区分)、金利・担保・保証、財務制限条項、返済期日の分布を、借入金等明細表や注記で確認します。
日本実務での扱い
(2026年11月時点)日本の財務諸表等規則は、借入金等明細表を附属明細表の一つとして定め(連結財務諸表を作成している場合は、個別の借入金等明細表は作成を要しません)[1]、社債・長期借入金・リース負債などで金利の負担を伴うものについて、返済予定額を一定の期間に区分した金額を注記することを求めています(金融商品に関する注記)[1]。有価証券報告書では、これらの明細・注記から、期日別の返済予定額を確認できます。
日本では、取引金融機関との関係(メインバンク)や、財務制限条項付きのシンジケートローン、コミットメントラインの活用が、借入金の実務を特徴づけます。LBO・PEの借入実務では、返済と財務制限条項の設計が投資の成否に関わります。BS全体の読み方はBS
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:短期借入金と長期借入金の違いと、1年内返済予定の長期借入金の扱いを説明してください。
「返済期日が決算日の翌日から1年以内なら短期借入金(流動負債)、1年を超えれば長期借入金(固定負債)です。長期借入金のうち1年以内に返済期日が来る分は、流動負債に振り替えて表示します。たとえば長期借入金が5,000で毎期1,000返済なら、流動負債1,000、固定負債4,000です。」
深掘りの観点:当座借越の位置付け、有利子負債に含める範囲、借入金の返済が財務CFに表れること、デットスケジュールの組み方、が聞かれます。
よくある質問(F AQ)
Q. 借入金と社債の違いは何ですか。
A. 借入金は金融機関等との相対の契約による借入で、社債は有価証券として発行して資金を調達する手段です。どちらも通常は利息を伴い、有利子負債に含めます。BS上は、短期借入金・長期借入金と社債が別科目で表示されます[1]。
Q. 借入金の返済は営業CFに表れますか。
A. 元本の返済は財務活動によるキャッシュ・フローです。利息の支払額は、営業活動または財務活動のどちらに含めるかを選択する方法が基準で認められています[2]。
出典・参考(2 026-11確認)
- e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和三十八年大蔵省令第五十九号)第47条・第49条・第51条・第52条・第8条の6の2第9項・第121条. https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50000040059(2026年11月参照)
- 企業会計審議会「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」(1998年3月13日)第二・二・3(利息及び配当金の区分). https://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a909b2.htm(2026年11月参照);企業会計基準委員会(ASBJ)移管指針第6号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」第11項(選択した方法の継続適用). https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/ecl20261016_50.pdf(2026年11月参照)
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。