この記事で分かること

  • VBAとマクロの違いと、マクロ記録機能がVBAコードを生成する仕組み
  • 整数設例で確認する、複数ファイルを合算するマクロの検算方法
  • 財務モデル本体にVBAを使うと監査性が下がる理由と、使ってよい場面の線引き
  • 2022年以降のマクロ既定ブロックが社外配布モデルに与える実務影響

30秒で分かる定義

VBA(Visual Basic for Applications)とは、Excelを含むOfficeアプリケーションに組み込まれたプログラミング言語で、マクロとはそのVBAで書かれた一連の自動化手順のことです。読み方はブイビーエー。マクロ記録機能を使えば、画面上の操作(セルの入力・書式設定・ファイル保存など)を自動的にVBAコードへ変換できるため、プログラミングの知識がなくても簡単な自動化から始められます。反復作業の自動化、独自関数(ユーザー定義関数)の作成、他システムとの連携などに使われますが、財務モデル本体の計算ロジックに多用すると監査性が下がるため注意が必要です。

なぜ実務で重要なのか

投資銀行・PE・FASの現場では、決まった書式でのレポート出力、複数ファイルの一括処理といった定型作業が発生し、VBAで自動化すれば作業時間を大きく圧縮できます。一方でモデルの計算そのものをVBAで実装すると、Excelの数式監査機能(トレース矢印など)が使えず、コードを読める人しか検証できなくなるため、投資判断の根拠となるモデルでは採用を制限する会社が多くあります。財務モデルのクオリティチェックモデルレビューと引き継ぎの作法でも、VBAの使用範囲は確認項目の1つです。

計算式(または仕組み)

VBAはSub(実行手順)とFunction(値を返す独自関数)の2種類のプロシージャで構成されます。財務モデルでの代表的な使用例として、複数の値を重みで加重平均する独自関数は次のように書けます。

Function 加重平均(値範囲 As Range, 重み範囲 As Range) As Double
  加重平均 = Application.SumProduct(値範囲, 重み範囲) / Application.WorksheetFunction.Sum(重み範囲)
End Function

こうして定義した独自関数は、通常のワークシート関数と同様に=加重平均(B2:B4,C2:C4)の形でセルに入力して使えます。ただしVBAで作った独自関数は標準のSUMPRODUCT関数と違い、コードエディタを開かないと計算内容が分かりません。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。5支店の月次売上ファイル(A支店120、B支店95、C支店140、D支店60、E支店85、いずれも百万円)を1つのブックに合算するマクロを作ります。手計算での合計は120+95+140+60+85=500百万円です。

マクロは各ファイルを順に開き、売上セルの値を集計用ブックに書き写して合計する処理を行います。実行後の集計セルが500百万円と一致すれば、全ファイルを正しく処理できたことを確認できます。合計が440百万円(500−60)なら、D支店のファイル読み込みに失敗している可能性が高く、ファイルパスやループの終了条件を確認します。

財務モデルでの位置付け

VBAは、モデルの計算ロジックそのものではなくファイル操作・書式設定・出力作業の自動化に位置づけるのが安全な使い方です。売上や利益の計算式をVBAの中に書くと、モデルを開いただけでは中身が見えず数式監査ツールでの検証もできません。前提が変わった際にコードまで書き換える必要が生じ、シート上の数式だけを見ている他のメンバーが変更に気づけないリスクもあります。

財務モデル・Excelでの使い方

  • 自動化してよい作業:定型フォーマットへの出力、複数シートの一括印刷、外部ファイルの読み込みと転記
  • 避けるべき使い方:売上・利益・企業価値など、評価結果に直結する計算をVBAの中だけで完結させること
  • 個人用マクロブック(Personal.xlsb)に汎用マクロをまとめると、複数のモデルファイルで再利用できる
  • コードには日本語コメントで処理内容と作成日を残し、後任者が読める状態を保つ

マクロを多用した重いブックは重い財務モデルの高速化とも関係するため、ループ対象範囲を絞る、計算モードを一時的に手動へ切り替える、といった工夫が有効です。

この用語をExcelで「組める」状態にする

複数ファイルを読み込んで集計・出力するマクロを自作し、モデルの計算ロジックとファイル操作を安全に切り分けられるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「マクロを使えばモデルが速くなる」→ 必ずしもそうではありません。大量データをセル単位でループするVBAは、配列数式やパワークエリによる一括処理より遅くなることがあります。

誤解2:「マクロは監査証跡が要らない」→ 逆です。数式のように画面上で追跡できない分、コメント記載やバージョン管理がより重要になります。

誤解3:「VBAは危険だから使うべきではない」→ ファイル操作や出力作業の自動化には有効な手段です。避けるべきは評価結果に直結する計算ロジックをVBAだけに閉じ込めることです。

確認ポイント:受け取ったモデルにマクロがあれば、Visual Basic Editorでコードを確認し、何をしているマクロかを把握してから実行します。

日本実務での扱い

Microsoftは2022年7月以降、インターネット経由(メール添付やダウンロード)で受け取ったExcelファイルのVBAマクロを既定でブロックする仕様変更を段階的に導入しました。社外から受領したxlsm形式のモデルを開くと「マクロは既定でブロックされました」という警告が表示され、ファイルのプロパティで「ブロックの解除」を行うか、信頼できる場所として登録しない限りマクロが動作しません。日本のM&A・融資審査の実務でもこの制約が影響しており、多くの金融機関では情報セキュリティポリシー上、外部から受領したマクロの実行自体を原則禁止としています(2026年7月時点)。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:財務モデルでVBAを使うべき場面と、避けるべき場面を説明してください。
「ファイルの一括処理など計算結果に影響しない反復作業にはVBAが有効です。一方、売上・利益・企業価値の計算は数式監査ができ誰でも検証できる通常の数式で組むべきです。VBAの中に計算式を隠すと、レビューする側がブラックボックスとして扱わざるを得ず、モデルの信頼性が下がります。」

深掘りでは、マクロ記録機能で生成されたコードの問題点(絶対参照で固定される等)が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. マクロ記録機能だけで実務上の自動化は十分ですか?
A. 定型操作の繰り返しなら十分な場合もありますが、条件分岐やループ、他ファイルとの連携が必要になると、記録コードを手動編集する必要が出てきます。

Q. xlsmファイルを開くとマクロが無効と表示されるのはなぜですか?
A. インターネット経由で取得したファイルには「ブロックのマーク」が付与され、既定でマクロの実行がブロックされる仕様のためです。送信元が信頼できる場合は、プロパティから許可するか、信頼できる場所に保存してから開きます。

出典・参考(2026-07-21確認)

  • Microsoft サポート(インターネットから取得したファイルのマクロが既定でブロックされる仕様) https://support.microsoft.com/
  • 金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(内部統制報告制度、スプレッドシート統制の考え方) https://www.fsa.go.jp/

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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