この記事で分かること

  • TRENDとFORECAST.LINEARが同じ回帰式を使い、返す形式だけが違うこと
  • 最小二乗法による回帰直線の計算過程を実際に手計算で検算
  • ドライバーベース予測の代替として使ってよい場面・危うい場面
  • GROWTH関数(指数トレンド)との使い分け

30秒で分かる定義

TREND関数とFORECAST.LINEAR関数は、いずれも過去の実績データ点から最小二乗法で回帰直線(線形トレンド)を求め、将来の値を予測するExcel関数です。FORECAST.LINEAR(読み方:ふぉーきゃすとどっとりにあ、旧FORECAST関数)は、指定した1つの新しいx値に対応する予測値を単一の数値として返します。TREND(読み方:とれんど)は、複数の新しいx値に対する予測値を配列としてまとめて返せる点が異なります。指数的な増加を仮定する場合はGROWTH関数を使います。

なぜ実務で重要なのか

経営企画・FP&Aでは、詳細な売上ドライバーを積み上げるだけの情報がない初期段階や、大まかな水準感を確認する「叩き台」の数値作成にこの手法を使います。IB・PEのモデルでも、時間の制約から詳細なドライバーベース予測を組めない場面で、過去のトレンドをそのまま延長する簡易予測として使われることがあります。ただし、事業構造の変化を織り込めない手法であるため、使ってよい場面を見極める判断力が実務上重要です。

計算式(または仕組み)

回帰直線:y = a + b × x(最小二乗法で a・b を推定)
=FORECAST.LINEAR(新しいx, 既知のy, 既知のx)
=TREND(既知のy, 既知のx, 新しいx)

bは回帰直線の傾き(xが1単位増えたときのyの増加量)、aは切片(x=0のときのyの理論値)です。TREND・FORECAST.LINEARはこのa・bを内部で自動計算し、指定したxに対応するyを返します。

整数設例で確認する

設例(架空数値、単位:百万円)。過去4期の売上高が、期1=100、期2=110、期3=118、期4=130だったとします。x(期番号)の平均は 2.5、y(売上高)の平均は (100+110+118+130)÷4=114.5です。

傾きb = Σ(x-平均x)(y-平均y) ÷ Σ(x-平均x)² を計算します。分子は (-1.5)×(-14.5)+(-0.5)×(-4.5)+(0.5)×(3.5)+(1.5)×(15.5) = 21.75+2.25+1.75+23.25 = 49.0。分母は (-1.5)²+(-0.5)²+(0.5)²+(1.5)² = 2.25+0.25+0.25+2.25 = 5.0。よって b = 49.0÷5.0 = 9.8。切片a = 114.5-9.8×2.5 = 114.5-24.5 = 90.0となり、回帰式は y=90+9.8xです。

期5(x=5)の予測値 = 90+9.8×5 = 90+49 = 139。期6(x=6)の予測値 = 90+9.8×6 = 90+58.8 = 148.8。これはExcelで=FORECAST.LINEAR(5, {100,110,118,130}, {1,2,3,4})と入力した場合と一致し、=TREND({100,110,118,130},{1,2,3,4},{5,6})とすれば139と148.8が配列として一度に返ります。

案件プロセス上の位置付け

詳細な事業計画をヒアリングする時間がない一次スクリーニング段階や、社内の簡易な予算試算では、この線形予測が「叩き台」として使われます。一方、投資委員会向けの最終モデルや、積み上げ型(ボトムアップ)の予測が可能な段階では、売上予測とドライバー設計で扱う事業構造を反映した予測に置き換えるのが実務の標準的な進め方です。

財務モデル・Excelでの使い方

  • 既存の実績データを上書きせず、予測期間の新しい列にのみFORECAST.LINEAR・TRENDを適用する
  • 使用するデータ点数を絞り込む判断も必要で、古い期のデータを含めすぎると直近のトレンド変化が薄まる
  • 成長率が一定割合で加速・減速する傾向がある場合は、線形のTRENDではなく指数トレンドのGROWTH関数を検討する
  • 外れ値(一時的な特需・災害等)を含む期はデータから除外するか、除外した理由を前提として明記する

この用語をExcelで「組める」状態にする

過去実績から回帰直線を求め、TREND・FORECAST.LINEARで将来値を予測し、ドライバーベース予測との使い分けを判断できるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解1:「過去のトレンドは将来も続く」→ 正しくは、機械的な外挿にすぎず、新製品の投入や規制変更、競合参入といった事業構造の変化は一切反映されません。

誤解2:「TRENDとFORECAST.LINEARは全く別の計算をしている」→ 正しくは、数学的には同じ単回帰式を使っており、返す形式(配列か単一値か)が異なるだけです。

誤解3:「データ点は多いほど正確になる」→ 正しくは、古いデータを含めすぎると直近のトレンド変化が薄まるため、対象期間を意図的に絞り込む判断も必要です。

日本実務での扱い

日本企業の中期経営計画の策定初期段階で、この種の機械的な回帰予測が「叩き台」の数値作成に使われることはありますが、決算短信・有価証券報告書に記載する業績予想の根拠として、回帰予測の結果だけをそのまま用いることは一般的ではありません。日本取引所グループは決算短信における業績予想の開示について、算定根拠を含めた合理的な説明を求める考え方を示しており、開示される予測数値には事業計画の前提説明が必要になります。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:回帰分析(TREND関数)による売上予測の限界は何ですか。
「過去の実績データの延長線上でしか予測できないため、新製品の投入や市場構造の変化といった非連続な要因を反映できない点が限界です。データ点数が少ない場合や外れ値を含む場合は、傾きの推定自体が不安定になります。実務では、詳細な情報が得られない初期段階の参考値として使い、最終的にはドライバーベースの予測に置き換えるのが望ましいと考えます。」

深掘りでは「GROWTH関数との使い分け」「決定係数が低い場合にどう判断するか」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. GROWTH関数とTREND関数の違いは何ですか?
A. TRENDは等差的な増加(線形トレンド)を仮定するのに対し、GROWTHは等比的な増加率(指数トレンド)を仮定します。売上が一定額ずつ増える傾向にはTREND、一定の伸び率で増える傾向にはGROWTHが適しています。

Q. データのばらつきが大きく回帰直線が実績にあまり合わない場合はどうすべきですか?
A. RSQ関数などで決定係数を確認し、当てはまりが悪い場合は機械的な延長を諦め、要因別のドライバーベース予測に切り替えるべきです。

出典・参考(2026-08確認)

  • 日本取引所グループ「決算短信・四半期決算短信の作成要領等」(業績予想の開示に関する考え方) https://www.jpx.co.jp/
  • 総務省統計局(時系列データの統計的な取り扱いに関する解説) https://www.stat.go.jp/

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。

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