この記事で分かること
- TONA・TIBORそれぞれの算出主体と、円LIBOR公表停止に至った経緯
- 「後決め複利」と「フォワードルッキング」という金利確定方式の違い
- 整数設例によるTONA参照ローンの利息計算
- 契約実務(フォールバック条項)とモデル実装での注意点
30秒で分かる定義
TONA(とーな、Tokyo Overnight Average rate:無担保コールオーバーナイト物レート)とは日本銀行が算出・公表する翌日物の実取引ベースの金利で、TIBOR(たいぼー、Tokyo Interbank Offered Rate)とは全銀協TIBOR運営機関が算出・公表する、銀行が資金を出す際に呈示する期間物金利です。両者はいずれも円の金利指標ですが、算出方法も使われる場面も異なります。円LIBORは2021年末で公表が恒久的に停止され、実務の参照金利はTONAを中心とするRFRとTIBORの二本立てに再編されました。
なぜ実務で重要なのか
デリバティブ(IB・S&T)では、円金利スワップの変動金利側がTONA参照のOISへ移行しました。コーポレートファイナンス・融資審査では、シンジケートローンや社債の変動利率にTIBORが引き続き広く使われ、TONA参照ローンとの契約条項の違いを理解する必要があります。財務・経理では、既存契約の移行先を定める「フォールバック条項」の解釈が論点です。
仕組み(金利確定方式の違い)
TIBORは「フォワードルッキング」型です。1週間・1か月・3か月・6か月・12か月の期間ごとに、その期間開始時点で金利がひとつの数値として確定します。これに対しTONAは翌日物(1日限り)の金利であり、3か月分の利息を計算するには、その期間の日々のTONAを複利で積み上げる「後決め複利(compounded in arrears)」という方式を用います。
この方式では期間が終わるまで適用金利が確定せず、支払日の直前まで利払額が分からない実務上の負荷があります。この負荷を軽減するため「TORF」という民間提供のターム物指標もありますが、TIBORのような公式指標ではありません。
整数設例で確認する
設例(架空数値)。想定元本1億円、期間6か月(183日)のTONA参照ローン、スプレッド0.5%。実務では日々のTONAを複利で積み上げますが、ここでは期間平均TONA金利0.3%を用いた簡便計算とします。
- TONA分の利息 = 1億円 × 0.3% × 183/365 = 150,411円(円未満四捨五入)
- スプレッド分の利息 = 1億円 × 0.5% × 183/365 = 250,685円
- 合計支払利息 = 150,411円 + 250,685円 = 401,096円
実際のTONA参照取引では、この150,411円の部分が日々の複利積み上げによって初めて確定する点が、TIBORとの最大の違いです。
契約条項への影響
円LIBOR参照の既存契約(シンジケートローン・社債・デリバティブ)は、代替指標へ移行する「フォールバック条項」をあらかじめ組み込むか、契約変更で対応しました。ISDAはデリバティブ向けに標準フォールバック(TONA複利後決め+スプレッド調整)を定めています。TIBOR参照契約は指標自体が存続しているため大規模な移行対応は不要ですが、日本円とユーロ円で存続状況が異なるため、契約書の確認が実務上重要です。
財務モデル・Excelでの使い方
- TIBOR参照ローンは、リセット日にTIBORの値を1つ取得し期間中一定として利息計算すればよく、モデル上はシンプルです。
- TONA参照(複利後決め)は日次データの積み上げが必要で、簡易モデルでは期中平均金利で近似します。
- 両指標が混在する会社では、指標シートにTIBORとTONAを並べ、契約ごとにフラグで切り替えられるようにします。
変動金利実務はFRN(変動利付債)や金利スワップと合わせて理解すると把握しやすくなります。
実務家が確認するポイントとよくある誤解
誤解1:「LIBORが無くなったのでTIBORも無くなる」→ 正しくは、TIBORは別の運営機関・別の指標であり、日本円TIBORは存続しています。廃止されたのはLIBOR(円LIBOR)です。
誤解2:「TONAは期間物金利として使える」→ 正しくは、TONAは翌日物金利であり、期間の金利には複利計算が必要です。TIBORのように「3か月TONA」が最初から公表されているわけではありません。
実務家はさらに、参照金利がどれかを確認し、フォールバック条項の発動有無をチェックします。
日本実務での扱い(2026年7月時点)
日本銀行と金融庁は、英国FCAが2017年にLIBORの恒久的存続を保証しないと表明したことを受け、検討委員会を通じてTONAへの移行を推進しました。円LIBORは2021年12月末で公表停止され、既存契約は複利後決めTONA中心の代替金利へ移行しています。日本円TIBORは存続していますが、ユーロ円TIBORは公表終了に向けた対応が進められており、自社の参照指標の確認が必要です(2026年7月時点)。ローンはTIBOR、デリバティブはTONAが主流という「二重構造」が特徴です。
面接・モデルテストで問われるポイント
Q:TONAとTIBORの違いを説明してください。
「TONAは日本銀行が公表する翌日物の実取引ベースの金利で、期間物の利息計算には日々の値を複利で積み上げる後決め複利方式を使います。TIBORは全銀協TIBOR運営機関が公表する期間物のオファードレートで、期間開始時点で金利が確定するフォワードルッキング型です。円LIBOR公表停止を受け、デリバティブはTONA参照へ、ローンは引き続きTIBOR参照が多い棲み分けになっています。」(30秒回答例)
深掘りでは「後決め複利のシステム対応の難しさ」が問われます。
よくある質問(FAQ)
Q. なぜLIBORは廃止され、TIBORは存続しているのですか?
A. LIBORは2012年の不正操作問題を契機に、実取引の裏付けが乏しい呈示ベースの指標であることが問題視され、実取引に基づくRFRへの移行が主導されました。TIBORも呈示ベースですが、算出方法の頑健性が確認され存続しています。
Q. TONA参照スワップとTIBOR参照スワップは併存しますか?
A. 併存します。円LIBOR参照は新規組成できませんが、両者は異なる用途で使われ続けており、金利差(ベーシス)自体が新たなリスク管理の論点です。
出典・参考(2026-07-21確認)
- 日本銀行「金利指標改革」関連資料 https://www.boj.or.jp/
- 全銀協TIBOR運営機関 https://www.jbatibor.or.jp/
- 金融庁 参照金利改革に関する情報 https://www.fsa.go.jp/
※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。