この記事で分かること

  • セカンドリクエストの語源(米国HSR法)と、日本の第二次審査との対応関係
  • セカンドリクエストに移行すると何が変わるのか
  • 整数設例で確認する審査期間の伸長イメージ
  • クロージングスケジュールへの影響(2026年7月時点)

30秒で分かる定義

セカンドリクエストとは、企業結合審査の第一次審査で競争上の懸念が解消されない場合に移行する、追加の資料提出を伴う詳細な実質審査の手続です。「せかんどりくえすと」と読みます。もともとは米国のHSR法(Hart-Scott-Rodino法)に基づく届出制度で、当局(連邦取引委員会FTCまたは司法省DOJ)が発する追加情報要求を指す用語ですが、日本の企業結合審査における第二次審査(報告等の要請)も実務上しばしば同様の意味合いで語られます。

なぜ実務で重要なのか

セカンドリクエストへの移行は、案件のスケジュールと対応負担を一変させます。

  • IB(FA)・法務:セカンドリクエストへの移行が見込まれる案件では、初期段階からクロージングスケジュールに数ヶ月単位の余裕を織り込む必要があります。
  • 買収当事者:追加資料の収集・提出には社内外の大規模な対応チームが必要になり、法務・IT部門の負担が急増します。
  • PE・買い手:審査長期化リスクはロングストップ・デートの設定や規制対応コミットメント条項の交渉に直結します。

仕組み:第一次審査からセカンドリクエストへ

企業結合審査は、まず比較的短期間の第一次審査(届出受理後の待機期間)で行われ、多くの案件はここで問題なく完了します。しかし競争上の懸念が払拭できない場合、当局は追加の資料提出を要求し、より踏み込んだ実質審査(セカンドリクエスト、日本では第二次審査)へと移行します。

第一次審査(短期の待機期間)→ 懸念が残る場合:セカンドリクエスト(追加資料要求)→ 実質的な審査期間の伸長

米国のHSR届出では、当初30日間の待機期間中にセカンドリクエストが発出されると、待機期間は当事会社が要求資料に「実質的に対応(Substantial Compliance)」した日から新たに30日間(現金対価の場合等は短縮されるケースもあります)延長されます。実務上、資料収集自体に数ヶ月を要することも珍しくありません。

整数設例で確認する

設例(架空日程)。第一次審査からセカンドリクエストに移行した米国案件のスケジュール例です。

経過日数イベント
Day 0HSR届出
Day 25当局からセカンドリクエスト発出
Day 25〜130当事会社が追加資料を収集・提出(数ヶ月規模)
Day 130実質的対応完了
Day 160追加の待機期間(30日)満了、クロージング可能に

当初想定していた「届出から1〜2ヶ月でクロージング」という計画が、セカンドリクエストへの移行により半年規模のスケジュールに伸びる可能性がある点が、案件計画上の最大のインパクトです。

案件プロセス上の位置付け

セカンドリクエストへの移行が見込まれる業界再編案件(市場シェアが高い当事会社同士の統合等)では、M&Aプロセスの初期段階から独禁法カウンセルによる予備的な市場画定分析を行い、移行可能性を織り込んだスケジュールで交渉を進めます。契約上も、ロングストップ・デートを長めに設定したり、規制対応への努力義務の強度(最大限努力義務か、より強い誓約か)を交渉の重要論点として扱います。

財務モデル・Excelでの使い方

ディールタイムラインでは、セカンドリクエストが発出された場合とされない場合の2シナリオを用意し、それぞれのクロージング想定日とロングストップ・デートの余裕度を比較できる表を作成します。資料対応の外部コスト(弁護士・専門家費用)が数ヶ月にわたり発生することを前提に、案件コストの見積りにも織り込んでおくことが望まれます。

この用語をExcelで「組める」状態にする

セカンドリクエスト発出の有無で分岐するクロージングスケジュールのシナリオ表を組めるようになる。

M&Aモデル教材で実装手順を見る →

実務家が確認するポイントとよくある誤解

  • 誤解1「セカンドリクエストは稀にしか発出されない特殊な事態」→ 市場シェアが高い業界内での統合案件では、想定される標準シナリオの一つとして扱うべきリスクです。
  • 誤解2「資料さえ提出すればすぐ審査が終わる」→ 「実質的対応」の認定を当局から得る必要があり、資料の網羅性・検索性に不備があると追加のやり取りが発生し、さらに長期化します。
  • 確認ポイント:①当事会社の市場シェア・重複事業の有無、②社内の電子情報(メール等)の保存・検索体制、③セカンドリクエスト対応の外部専門家の早期確保。

日本実務での扱い

(2026年7月時点)日本の独占禁止法上の企業結合審査では、第一次審査(届出受理後30日)で問題が解消されない場合、公正取引委員会が報告等を要請し、いわゆる第二次審査に移行します。この場合、待機期間は当事会社が要請された報告等をすべて提出した日から原則90日を経過するまで延長されます。米国のセカンドリクエストと制度の細部(資料要求の範囲・様式)は異なりますが、「第一次審査で終わらない場合に、より重い追加資料の提出義務を伴う審査へ移行し、審査期間が大きく延びる」という基本構造は共通しています。クロスボーダーM&Aでは、日米欧それぞれの制度でこの種の詳細審査に移行するリスクを個別に評価する必要があります。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:セカンドリクエストに移行すると、案件のスケジュールにどのような影響がありますか。
「第一次審査の短期間の待機期間では終わらず、追加資料の収集・提出に数ヶ月規模の時間を要するようになります。当事会社が資料提出について当局から『実質的対応』の認定を受けた後、さらに追加の待機期間が設けられるため、当初想定していたクロージング日を数ヶ月単位で後ろ倒しする必要が生じます。長期化リスクはロングストップ・デートの設定にも反映させる必要があります。」

よくある質問(FAQ)

Q. セカンドリクエストが出された案件は、最終的に承認されないことが多いのですか?
A. セカンドリクエストの発出自体は詳細審査への移行を意味するに過ぎず、最終的に無条件承認、是正措置付き承認、当局による差止訴訟のいずれもあり得ます。移行イコール不承認ではありません。

Q. 日本の第二次審査は米国のセカンドリクエストと全く同じ手続ですか?
A. 目的(詳細な実質審査への移行)は共通していますが、報告等の要請の様式や待機期間の算定方法など制度の細部は異なるため、法域ごとの手続に沿った個別対応が必要です。

出典・参考(2026-07-21確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。