この記事で分かること

  • 上場廃止基準の主な種類(時価総額・債務超過・株主数等)
  • 監理銘柄・整理銘柄に指定される流れ
  • 整数設例で確認する流通株式時価総額基準の抵触判定
  • TOB・非公開化と上場廃止基準の関係

30秒で分かる定義

上場廃止基準(じょうじょうはいしきじゅん、Delisting Criteria)とは、東京証券取引所が定める、上場会社が上場を維持するために満たすべき諸基準の総称です。時価総額・流通株式比率・株主数・売上高・債務超過の有無・法令違反の有無など複数の観点から基準が設けられており、いずれかの基準に一定期間継続して抵触すると、監理銘柄への指定を経て上場廃止に至ります。東証市場区分ごとに求められる基準の水準は異なります。

なぜ実務で重要なのか

PE・M&Aでは、TOB(株式公開買付け)やMBOによる非公開化の検討時に、対象会社が上場維持基準に抵触するリスクがあるかどうかが、取引の緊急性やバリュエーションの前提に影響することがあります。IR・経営企画では、上場維持基準への適合状況を継続的にモニタリングし、抵触リスクが生じた場合の改善計画(自己株式取得の抑制、流通株式比率の改善策等)を検討します。クレジット・与信管理では、取引先企業の上場廃止リスクを信用力評価の一要素として捉えることがあります。

仕組み(監理銘柄・整理銘柄への指定プロセス)

上場廃止までのプロセス 基準抵触 改善期間の開始 監理銘柄指定 改善が見られない場合 整理銘柄指定 最終猶予期間(約1か月) 上場廃止 監理銘柄・整理銘柄の指定期間中も原則として売買は継続され、投資家は取引の機会を確保できる。
図:上場廃止基準への抵触から上場廃止に至る一般的なプロセス(簡略化)

基準に抵触した銘柄には、改善に向けた一定の猶予期間が与えられるのが一般的です。猶予期間内に基準を回復できなければ「監理銘柄」に指定され、上場廃止のおそれがあることが市場に周知されます。それでも基準が回復しなければ上場廃止が決定し、最終的な売買機会を確保するための「整理銘柄」に指定(通常1か月程度)された後、上場廃止となります。

整数設例で確認する

設例(架空数値)。グロース市場上場会社の流通株式時価総額の基準は5億円とします。この会社の流通株式時価総額が、株価下落により基準を下回る状態が続いたとします。

  • 基準抵触前:流通株式数400万株 × 株価150円 = 6億円(基準5億円をクリア)
  • 基準抵触後:流通株式数400万株 × 株価100円 = 4億円(基準5億円を下回る)

この状態が改善期間(基準や市場区分により定められる期間)を超えて継続すると、監理銘柄への指定を経て上場廃止に至る可能性があります。株価が回復して流通株式時価総額が基準を再び上回れば、猶予期間内であれば改善したと判定される仕組みです。

案件プロセス上の位置付け

PEファンドやスポンサー企業が経営不振の上場会社を支援する場合、上場維持基準への抵触が差し迫っているかどうかが取引のタイムラインに影響します。第三者割当増資による資本増強で財務基準(債務超過解消等)をクリアする、あるいはTOBを通じて非公開化することで上場廃止基準の問題自体を切り離す、といった選択肢が検討されます。

財務モデル・Excelでの使い方

  • 上場維持基準のモニタリングシートでは、時価総額・流通株式比率・純資産額等の主要指標を四半期ごとに追跡し、基準値との乖離を条件付き書式で警告表示します。
  • 株価シナリオ分析(下落幅)を組み込み、どの程度の株価下落で基準抵触に至るかの感応度を計算します。
  • 資本政策の代替案(第三者割当増資・自己株式取得の停止等)ごとに、基準回復までの期間を試算します。

この用語をExcelで「組める」状態にする

上場維持基準の抵触モニタリングと、株価シナリオごとの基準回復シミュレーションを組めるようになる。

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実務家が確認するポイントとよくある誤解

誤解:「監理銘柄に指定されたらすぐに取引できなくなる」→ 正しくは、監理銘柄・整理銘柄の指定期間中も原則として売買は継続されます。監理銘柄・整理銘柄という指定は「上場廃止のおそれ・上場廃止が決定したこと」を周知する制度であり、投資家が保有株式を売却する機会は一定期間確保されています。

実務家はさらに、上場廃止の理由が市場基準への抵触(時価総額不足等)なのか、それとも虚偽記載や反社会的勢力の関与といった不祥事によるものなのかを区別し、後者の場合は損害賠償請求など投資家保護の観点からの対応も検討します。

日本実務での扱い(2026年7月時点)

東京証券取引所は有価証券上場規程で上場廃止基準を定めており、市場区分ごとに時価総額・流通株式時価総額・純資産額・売上高等の具体的な数値基準が設けられています。2022年の市場区分再編にあたっては、新基準に満たない企業に対する経過措置が設けられましたが、その適用は段階的に見直されており、上場維持基準の充足状況の開示強化が進められています(2026年7月時点)。上場会社は決算短信や適時開示を通じて、上場維持基準への適合状況を定期的に開示することが求められています。

面接・モデルテストで問われるポイント

Q:監理銘柄と整理銘柄の違いを説明してください。
「監理銘柄は、上場廃止基準に抵触するおそれがある銘柄について、投資家に注意を促すために指定されるもので、この段階ではまだ上場廃止が確定していません。整理銘柄は、上場廃止が正式に決定した銘柄について、投資家が最終的に売買できる猶予期間(通常1か月程度)を確保するために指定されるものです。両者は上場廃止プロセスの異なる段階を示しています。」(30秒回答例)

深掘りでは「市場区分ごとの上場維持基準の違い」「経過措置の適用範囲」が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q. 上場廃止になった株式はどうなりますか?
A. 取引所での売買はできなくなり、株式の換金性が大きく低下します。ただし、TOB等による非公開化に伴う上場廃止であれば、TOB価格での売却機会があらかじめ用意されているのが一般的です。基準抵触による上場廃止の場合は、換金機会が限定される点に注意が必要です。

Q. 上場廃止基準は市場区分によって異なりますか?
A. 異なります。プライム市場はより高い水準の時価総額・流動性基準が求められる一方、グロース市場は成長企業向けであるため、時価総額基準は相対的に低く設定されています。

出典・参考(2026-07-21確認)

※本記事は教育目的の一般的な解説であり、法務・税務・投資助言ではありません。設例は理解のための架空数値です。